診療マル秘裏話  号外Vol.1588 令和1年9月8日作成

作者 医療法人社団 永徳会 藤田 亨




★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★













目次
 
1)IL-31が脳に痒み感覚を伝える際、必要な物質
2)ワクチンが猫アレルギーの症状軽減に効果あり














◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆









 医療界のトピックスを紹介するこのメールマガジンは
1週間に1回の割合で発行しています。もっと回数を増や
して欲しいという要望もあるのですが、私の能力のなさ
から1週間に1回が限度となっています。これからも当た
り前の医療をしながら、なおかつ貪欲に、新しい知識を
吸収し読者の皆様に提供してゆきたいと思っております。
不撓不屈の精神で取り組む所存ですのでどうかお許し下
さい。

 









 
1】IL-31が脳に痒み感覚を伝える際、必要な物質













 九州大学は8月9日、アトピー
性皮膚炎の主要なかゆみ惹起物
質であるIL-31 が、脳に「痒み
の感覚」を伝える際、ニューロ
キニンB という物質が必要であ
ることを世界に先駆けて発見し
たと発表しました。この研究は、
同大生体防御医学研究所の福井
宣規主幹教授、坂田大治助教の
研究グループが、同大医学研究
院の古江増隆教授、富山大学大
学院医学薬学研究部の安東嗣修
准教授と共同で行ったものです。
研究成果は,「Journal of All
ergy and Clinical Immunolog
y 」に同日付で掲載されました。
アトピー性皮膚炎は国民の7~
15%が罹患している国民病であ
り、そのかゆみをコントロール
するための創薬ニーズは極めて
高いといえます。これまで、か
ゆみ研究はヒスタミンを中心に
進んできましたが、アトピー性
皮膚炎のかゆみの多くは抗ヒス
タミン剤(H1ヒスタミン受容体
遮断薬)では抑制されないこと
から、別のかゆみ物質の存在が
示唆されてきました。こうした
中、アトピー性皮膚炎と関連し
た新しいかゆみ物質としてIL-3
1 が注目されています。IL-31
は主にヘルパーT 細胞から産生
され、その受容体は感覚を司る
脊髄後根神経節に高発現するこ
とが報告されていますが、IL-3
1 がどうやって脳にかゆみの感
覚を伝えているかは不明でした。
研究グループは以前から、DOCK
8 という分子を欠損した患者さ
んが重篤なアトピー性皮膚炎を
発症することに着目し、この蛋
白質の機能解析を進めてきまし
た。この中で、DOCK8 が発現で
きないように遺伝子操作したマ
ウス(Dock8-/-)では、DOCK8
を発現したマウス(Dock8+/-)
と異なり、掻破行動を伴う重篤
なアトピー様皮膚炎を自然発症
し、血中のIL-31 が異常高値を
示すことを明らかにしています。
そこで今回、これらのマウスか
ら脊髄後根神経節を単離し、そ
の遺伝子発現を解析したところ、
Dock8-/-の脊髄後根神経節にお
いて発現が上昇する遺伝子が69
8 種類あり、その上位2 番に位
置していたのが、ニューロキニ
ンB をコードする遺伝子でした。
興味深いことにDock8-/-であっ
ても、遺伝子操作でIL-31 受容
体やIL-31 の発現を無くした場
合には、この遺伝子の発現上昇
は認められませんでした。この
ことから、ニューロキニンB が、
IL-31 刺激依存的に、脊髄後根
神経節で産生されることが明ら
かになりました。

次に、IL-31 によるかゆみ感覚
の脳への伝達に、ニューロキニ
ンB が本当に重要なのかを調べ
るため、ニューロキニンB を発
現できないように遺伝子操作し
たマウスを作製したところ、通
常のマウスに比べて、IL-31 投
与による引っ掻き行動が顕著に
低下していました。一方、他の
かゆみ惹起物質(ヒスタミンや
クロロキン、PAR2作動薬)に対
する反応性は、両者の間で違い
を認めませんでした。このこと
から、ニューロキニンB は、IL
-31 によるかゆみ感覚の伝達に
選択的に関わっていることが明
らかになりました。

これまで多くのかゆみ惹起物質
が、NppbやGRP という神経伝達
物質を使って、かゆみの感覚を
脳に伝えていることが知られて
います。そこで研究グループは
次に、これらの神経伝達物質と
ニューロキニンB の関係性につ
いて検討しました。ニューロキ
ニンB をマウスの脊髄腔に注射
すると、引っ掻き行動が誘発さ
れますが、これはGRP の受容体
を発現する神経細胞を前もって
除去しておくと、低下しました。
一方、Nppbの受容体を発現する
神経細胞を前もって除去してお
いても、ニューロキニンB によ
る引っ掻き行動には、影響があ
りませんでした。このことから、
ニューロキニンB はGRP の上流
で機能し、GRP を使って、IL-3
1 によるかゆみ感覚を脳へ伝達
していることが示唆されました。
ニューロキニンB は、NK3Rとい
う受容体を介して、シグナルを
細胞内へ伝えます。最後に研究
グループはNK3R阻害剤でIL-31
によるかゆみが抑えられるかを
検討しました。これまでに多く
のNK3Rの選択的阻害剤が開発さ
れています。そのひとつである
オサネタントは、精神疾患の薬
として開発され、これまで大き
な副作用は報告されていません。
オサネタントをマウスに投与し
たところ、ヒスタミンやクロロ
キン、PAR2作動薬による引っ掻
き行動には、全く影響がなかっ
た一方で、IL-31 による引っ掻
き行動は顕著に抑制されました。
同様の結果は、他のNK3R阻害剤
を用いた場合にも得られたとい
うことです。研究グループは、
「NK3R阻害剤は、アトピー性皮
膚炎の痒みをコントロールする
ための、新たな選択肢となるこ
とが期待される」と、述べてい
ます。

アトピー性皮膚炎の薬物による

通常の治療法について、解説し

ている動画です。

 

 

 

 



 茶道の師匠のPAR2作動薬によ
る痒みにNK3R阻害剤を使う。笑
















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆















2】 ワクチンが猫アレルギーの症状軽減に効果あり













 スイスのバイオベンチャー企
業が開発中のワクチンが、猫ア
レルギーの症状軽減に効果があ
ることが分かりました。アレル
ギー症状が原因で飼育を諦めて
いた人には朗報となりそうです。
 スイスの「ハイポペット」社
の研究者がまとめた論文がこの
ほど、米医学誌「アレルギー・
臨床免疫学誌」(電子版)に掲
載されました。
 猫アレルギーの主なアレルゲ
ンは「Fel d 1」と呼ばれ
る猫が分泌する蛋白質とされて
います。論文によると、54匹の
猫に開発中のワクチンを投与し
たところ、全ての猫でアレルゲ
ンの働きが抑えられ、飼い主の
症状軽減に効果が見られたとい
うことです。
 猫は西洋諸国の約25%の家庭
で飼われていますが、人口の1
割程度がアレルギー症状を抱え
るとされています。研究者は「
人間と猫の双方にとって有益だ。
飼い主はより猫に寛容になり、
猫は動物保護施設に送られずに
家庭にとどまることができる」
と指摘しました。
 ハイポペットのジェニングス
最高経営責任者(CEO)は声
明で「この待望の製品の市場投
入に向け、欧州と米国の規制当
局と協議を進めている」と述べ
ました。

このニュースのニュース動画で

す。

 

 

 

 



 私的で至適で詩的な指摘を受
ける。          笑















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆















編集後記



 九州大学が8月9日、アトピー
性皮膚炎の主要なかゆみ惹起物
質であるIL-31 が、脳に「痒み
の感覚」を伝える際、ニューロ
キニンB という物質が必要であ
ることを世界に先駆けて発見し
たと発表したのは、偉大な業績
です。これまで多くのかゆみ惹
起物質が、NppbやGRP という神
経伝達物質を使って、かゆみの
感覚を脳に伝えていることが知
られていました。ニューロキニ
ンB はGRP の上流で機能し、GR
P を使って、IL-31 によるかゆ
み感覚を脳へ伝達していること
が示唆されたとのことなので、
かゆみの感覚を脳に伝えるだけ
でも、たくさんの重要な分子が
関与していることが分かりまし
た。NK3R阻害剤が、アトピー性
皮膚炎の痒みをコントロールす
るための、新たな選択肢となる
ことを期待したいと思います。
 スイスのバイオベンチャー企
業が開発中のワクチンが、猫ア
レルギーの症状軽減に効果があ
ることが分かったのは、驚くべ
き業績です。アレルギー症状が
原因で飼育を諦めていた人には
朗報となりそうです。 ただし、
アレルギー症状は無くなっても
猫には、人獣共通感染症がある
場合があり、スキンケアーを取
れば取るほど、人獣共通感染症
になる可能性が高くなります。
猫に関して、人獣共通感染症の
具体例を列挙しますと、サルモ
ネラ症、猫ひっかき病、Q熱、
パスツレラ症、カプノサイトフ
ァーガ・カニモルサス感染症、
皮膚糸状菌症、トキソプラズマ
症、回虫幼虫移行症、疥癬(か
いせん)などです。 この中で、
致命的な病気は、カプノサイト
ファーガ・カニモルサス感染症
で動物にはほとんど症状が現れ
ませんが、人間に感染すると発
熱、腹痛、吐き気などの症状が
あり、重症化すると敗血症や脳
髄炎になることがあります。海
外の症例で、お年寄りが飼い犬
に咬まれて亡くなった事例があ
るので、注意が必要です。

 症例に対する優良な治療を、
奨励する。        笑














************************

このメールマガジンは以下の配信システムを利用して
発行しています。
  解除の手続きは下記ページよりお願い致します。
「まぐまぐ」https://www.mag2.com/m/0000121810.html
(イジニイワト)

発行者名  医療法人永徳会 皿沼クリニック院長 
藤田 亨
職業    医師の箸くれ(はしくれ)
運営サイト https://www.eitokukaisalanuma.or.jp/
ご意見・ご感想・励ましのお便りお待ちしております。
sara2162@atlas.plala.or.jp
このマガジンの掲載記事を無断で転載・使用すること
を禁じます。