診療マル秘裏話  号外Vol.1633 令和1年10月31日作成

作者 医療法人社団 永徳会 藤田 亨




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目次
 
1)マイクロRNAが,大腸がんの新規がん幹細胞制御因子
2)世界初非抗体型免疫チェックポイント 阻害剤の可能性















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 医療界のトピックスを紹介するこのメールマガジンは
1週間に1回の割合で発行しています。もっと回数を増や
して欲しいという要望もあるのですが、私の能力のなさ
から1週間に1回が限度となっています。これからも当た
り前の医療をしながら、なおかつ貪欲に、新しい知識を
吸収し読者の皆様に提供してゆきたいと思っております。
不撓不屈の精神で取り組む所存ですのでどうかお許し下
さい。

 









 
1】マイクロRNAが,大腸がんの新規がん幹細胞制御因子












 藤田医科大学は10月4日、マ
イクロRNA miR-221 がヒト大腸
がんの新規がん幹細胞制御因子
であることを解明したと発表し
ました。同研究は、同大学の下
野洋平教授、米国コロンビア大
学の向山順子博士とPiero Dale
rba 博士、神戸大学の鈴木聡教
授、南博信教授、掛地吉弘教授、
九州大学の三森功士教授の研究
グループによるものです。研究
成果は、国際学術誌「Cancer R
esearch 」オンライン版に掲載
されました。

 がん幹細胞は、幹細胞のよう
な能力をもつことで、条件が整
えばがん組織全体を再生できる
特殊ながん細胞です。そのため、
がん幹細胞を抑えることでがん
の治療効果が高まることが期待
されています。研究グループは
先行研究により、乳がん幹細胞
の機能が、マイクロRNA により
制御されていることを同定して
いました。がん幹細胞は、大腸
がんでもがんの発生、治療抵抗
性、再発、転移などに重要な働
きをすることが示されています
が、ヒト大腸がん幹細胞の制御
にどのようなマイクロRNA が関
わっているのかは明らかになっ
ていませんでした。

 今回、研究グループは、大腸
がんの手術検体から分離したが
ん幹細胞を解析し、miR-221 が
大腸がんのがん幹細胞制御因子
であることを解明しました。ま
ず、大腸がんの手術検体よりが
ん幹細胞を分離し、754 種類の
マイクロRNA の発現をスクリー
ニングし、特にmiR-221 ががん
幹細胞でのみ非常に高発現して
いることが明らかになったとい
うことです。また、がんゲノム
データベースの解析よりmiR-22
1 が高発現している大腸がん患
者さんは、低発現の患者さんに
比べて予後不良であることが明
らかになりました。がん幹細胞
の基本的な機能(増殖・分化し
腫瘍形成をするなど)は、miR-
221 発現を抑えることで顕著に
抑制されたとしています。

 次に、研究グループは、miR-
221 ががん幹細胞遺伝子として
働く際には、RNA 結合蛋白質QK
I-5 を標的として抑制すること
が重要であることを見出しまし
た。QKI-5 の発現を強めると、
miR-221 を抑制した時と同様に
がん幹細胞のもつ基本的な機能
は抑制されたということです。

 研究グループは、乳がんのが
ん幹細胞でもmiR-221 の発現上
昇がみられることを見出してお
り、miR-221 は大腸がんと乳が
んに共通するがん幹細胞の制御
因子だと考えられます。今後は、
miR-221 を抑制する治療法を見
出すことで、大腸がんや乳がん
に限らず、多くのがん種の治療
効果を高められるようになるこ
とが期待される、と研究グルー
プは述べています。

マイクロRNAについて解説して

いる動画です。

 

 

 

 



 共通する症状は、胸痛だった。















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2】 世界初非抗体型免疫チェックポイント 阻害剤の可能性












 九州大学は10月3日、PTPN3(
プロテインチロシンフォスファ
ターゼノンレセプタータイプ3)
阻害剤が、低分子化合物として
開発できる、世界初の非抗体型
免疫チェックポイント阻害剤と
なる可能性を示唆する研究結果
を発表しました。 この研究は、
同大大学院 医学研究院の大西
秀哉准教授および医学系学府博
士課程4年の藤村晶子大学院生
の研究によるものです。研究成
果は、「Cancer Immunology Im
munotherapy 」にてオンライン
公開されました。

 抗PD-1抗体(ニボルマブ)等
の免疫チェックポイント阻害剤
は、近年、その著効例が認めら
れ、注目されるようになってき
ました。しかし、既存の免疫チ
ェックポイント阻害剤は抗体薬
のみで薬価が高く、効果は限定
的で、重篤な有害事象も報告さ
れており、既存の薬剤と併用す
る治療の可能性を含め、新しい
分子を標的とした免疫治療開発
は継続の必要があります。

 研究グループは、活性化リン
パ球において、チロシン脱リン
酸化酵素であるPTPN3 の発現が
活性化前に比べて増加すること
に着目しました。活性化リンパ
球のPTPN3 発現を抑制すると、
チロシンキナーゼの脱リン酸化
が抑制されることで、チロシン
キナーゼが活性化し、リンパ球
の増殖、遊走、がん細胞傷害活
性が亢進すること、つまり、活
性化リンパ球で発現が亢進する
PTPN3 が免疫チェックポイント
として作用することが試験管を
用いた実験で分かりました。

 さらに、マウスに患者さん由
来のがん細胞を接種し、同じ患
者さんから採取した活性化リン
パ球を投与して治療を行う実験
を行ったところ、PTPN3 を抑制
した活性化リンパ球を投与した
マウスは、PTPN3 を抑制してい
ない活性化リンパ球を投与した
マウスに比べ、がんのサイズが
有意に小さいという結果となり
ました。また、活性化前リンパ
球のPTPN3 を抑制してもリンパ
球機能に影響がないことを確認
しました。これらのことから、
PTPN3 抑制治療に伴う有害事象
(自己免疫反応)が起こりにく
いことが示唆されました。

 今回の研究は、PTPN3 阻害剤
が、低分子化合物として開発で
きる世界初の非抗体型免疫チェ
ックポイント阻害剤となる可能
性を示唆するものです。「この
研究成果を基に、新規免疫チェ
ックポイント阻害薬開発へ向け
て、さらなる研究を続けていき
たい」と研究者は述べています。

免疫療法について解説している

動画です。

 

 

 

 



 PTPN3 の発現について発言す
る。           笑














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編集後記




 藤田医科大学が10月4日、マ
イクロRNA miR-221 がヒト大腸
がんの新規がん幹細胞制御因子
であることを解明したと発表し
たのは、偉大な業績です。マイ
クロRNA が、がんの診断や治療
に使われることは知っていまし
たが、新規がん幹細胞制御因子
であるというのは、初耳でした。
がん幹細胞については、現在、
余り分かっていないことが多い
とされています。 私の先輩の
先生が、白血病幹細胞について
の研究をされていて、白血病幹
細胞を通常の白血病細胞に戻し
て、分裂を盛んにするには少量
のヒ素を用いるしかないとおっ
しゃっていたのを記憶していま
す。ただヒ素を用いた臨床研究
となるとハードルが一気に高く
なることが、分かっています。
ヒ素が毒であることが問題なの
ですが、中国、韓国では低用量
のヒ素を今も昔も漢方薬金蛇精
として、用いていることを特記
したいと思います。
 九州大学が10月3日、PTPN3(
プロテインチロシンフォスファ
ターゼノンレセプタータイプ3)
阻害剤が、低分子化合物として
開発できる、世界初の非抗体型
免疫チェックポイント阻害剤と
なる可能性を示唆する研究結果
を発表したのは素晴らしい業績
です。抗PD-1抗体(ニボルマブ)
等の免疫チェックポイント阻害
剤は、近年その著効例が認めら
れ、注目されるようになってき
ました。しかし、既存の免疫チ
ェックポイント阻害剤は抗体薬
のみで薬価が高く、効果は限定
的で、重篤な有害事象も報告さ
れているので、効果が幅広く、
重篤な有害事象も少ない、免疫
チェックポイント素材剤の開発
が急務とされてきました。PTPN
3 を抑制した活性化リンパ球を
投与したマウスは、PTPN3 を抑
制していない活性化リンパ球を
投与したマウスに比べ、がんの
サイズが、有意に小さいという
結果となり、PTPN3 抑制治療に
伴う有害事象(自己免疫反応)
が起こりにくいことが示唆され
たのは願ったり叶ったりの結果
だったと推測されます。

 高価な硬貨の経済効果を測る。















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