9診療マル秘裏話  号外Vol.1635 令和1年11月2日作成

作者 医療法人社団 永徳会 藤田 亨




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目次
 
1)脂肪組織による、新代謝調節概念を提唱と発表
2)黄色ブドウ 球菌多剤耐性機構を不活化の化合物















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 医療界のトピックスを紹介するこのメールマガジンは
1週間に1回の割合で発行しています。もっと回数を増や
して欲しいという要望もあるのですが、私の能力のなさ
から1週間に1回が限度となっています。これからも当た
り前の医療をしながら、なおかつ貪欲に、新しい知識を
吸収し読者の皆様に提供してゆきたいと思っております。
不撓不屈の精神で取り組む所存ですのでどうかお許し下
さい。

 









 
1】脂肪組織による、新代謝調節概念を提唱と発表












 大阪大学は10月4日、アディ
ポネクチンとエクソソームを介
した脂肪組織による新しい代謝
調節概念を提唱したと発表しま
した。この研究は、同大学大学
院医学系研究科の喜多俊文寄附
講座講師、前田法一寄附講座准
教授、下村伊一郎教授(内分泌・
代謝内科学)らの研究グループ
によるものです。 研究成果は、
米国科学誌「Journal of Clini
cal Investigation 」にて公開
されました。

これまで、ホルモンやサイトカ
インなどが臓器間の情報伝達に
直接的に働き、全身的な代謝調
節を担っていると考えられてき
ました。 しかし、近年、脂肪
組織自体のエクソソーム産生が
全身的な代謝制御に寄与するこ
とがいくつか報告されています。

脂肪組織は、エネルギー貯蔵と
アディポサイトカインの分泌に
よって全身的代謝調節に寄与す
ると考えられていますが、脂肪
組織自体やアディポネクチンを
介して産生されるエクソソーム
による代謝調節については明ら
かになっていませんでした。今
回、研究グループは、アディポ
ネクチンが骨格筋や心筋、血管
内皮細胞などのT-カドヘリン発
現細胞に作用し、エクソソーム
産生を促進することで全身の内
分泌・代謝調節に重要な役割を
担うことを明らかにしたという
ことです。今後、血中のエクソ
ソームレベルを調べることで代
謝性疾患やその合併症に対する
新しい診断・治療の発展が期待
される、と研究グループは述べ
ています。

エクソソーム(Exosome 、エキ
ソソームとも呼ばれる)は細胞
から分泌される直径50-150nm(
ナノメートル:10億分の1メー
トル)の顆粒状の物質です。そ
の表面は、細胞膜由来の脂質、
蛋白質を含み、内部には核酸(
マイクロRNA、メッセンジャーR
NA、DNA など)や、蛋白質など
細胞内の物質を含んでいます。
エクソソームは細胞外小胞(Ex
tracellular vesicle )の一種
とされており、細胞外小胞には
エクソソームのほかにマイクロ
ベシクル、アポトーシス小体が
あり、それぞれ産生機構や大き
さが異なります。

エクソソームは、エンドサイト
ーシス(細胞が細胞外の物質を
取り込む機構の一種)により細
胞内にできたエンドソームがさ
らに陥入することで作られた膜
小胞が、細胞外に放出されたも
のです。エクソソームの表面に
は細胞膜成分が、内部には細胞
内の物質が含まれるため、分泌
された元の細胞の特徴を反映し
ていると考えられています。

メタボリックシンドロームの原
因である内臓脂肪が蓄積すると、
脂肪細胞が肥大・増殖し、アデ
ィポサイトカインの分泌異常が
起こります。これが動脈硬化を
促進し、糖尿病・高血圧・脂質
異常症を発症させ、悪化させる
原因です。内臓脂肪がたまると
アディポサイトカインという物
質の分泌異常をおこします。ア
ディポサイトカインは本来、脂
肪細胞から分泌され、脂質代謝
や糖代謝を円滑にする働きの生
理活性物質をいいます。アディ
ポサイトカインには、レプチン・
アディポネクチン・TNFα・PAI
-1・アンジオテンシノーゲン等
があります。

アディポネクチンは、傷ついた
血管壁を修復する働きをしてい
て動脈硬化を予防するほか、イ
ンスリンの働きを高める作用、
血圧を低下させる作用などがあ
ります。 内臓脂肪が増えると、
アディポネクチンの分泌が減少
し、動脈硬化を防ぐ働きが低下
しますし、インスリン抵抗性の
状態を引きおこし、血糖を上昇
させます。

エクソソームについて解説して

いる動画です。

 

 

 

 




 酸性物質の産生機構。笑














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2】 黄色ブドウ 球菌多剤耐性機構を不活化の化合物












 日本医療研究開発機構(AMED)
は10月4日、核磁気共鳴法(NM
R 法)を用いて、QacRが溶液中
で多剤耐性トランスポーターqa
cA遺伝子の転写・発現を亢進す
る活性構造と抑制する不活性構
造との間をミリ秒で行き来する
構造平衡下にあること、また、
QacRが薬剤結合時に活性構造を
取る割合により、転写活性が決
定することを明らかにしたと発
表しました。この研究は、東京
大学大学院・薬学系研究科およ
び次世代天然物化学技術研究組
合の嶋田一夫教授と産業技術総
合研究所・創薬分子プロファイ
リング研究センターの竹内恒研
究チーム長のグループによるも
のです。研究成果は「Proceedi
ngs of the National Academy
of Sciences of the United St
ates of America 」に掲載され
ています。多剤結合転写因子は、
多様な構造および広い範囲の分
子量を持つ薬剤に高親和性で結
合し、薬剤を細菌の外に排出す
る多剤耐性トランスポーターの
発現量を増大させて薬の効果を
低下させます。このように多剤
結合転写因子と多剤耐性トラン
スポーターから構成される多剤
耐性機構は、病原細菌などでそ
の存在が良く知られているとと
もに、ヒトのがん細胞において
も見られ、抗がん剤を効きにく
くするなど医療上の問題が生じ
ています。

多剤耐性機構を不活性化する薬
剤を合理的に設計するためには、
その制御の要である多剤結合転
写因子が多様な化合物に結合し
て、多剤耐性トランスポーター
の発現量を増大させる分子機構
を調べることが必要となります。
病原細菌の一種である黄色ブド
ウ球菌においては、多剤結合転
写因子QacRが多剤耐性トランス
ポーターQacAの発現を制御する
ことで、多剤耐性機構をコント
ロールしていますが、QacRが化
合物によって異なるレベルでQa
cAの発現を制御する仕組みは明
らかではありませんでした。研
究グループは、異なるレベルで
活性化を引き起こす6種の化合
物と結合した状態のQacRおよび
化合物に結合していない状態の
QacRについて、溶液中での構造
を核磁気共鳴(NMR )法により
解析しました。その結果、QacR
がすべての状態で、活性・不活
性構造をミリ秒で行き来する構
造平衡にあること、転写活性は
化合物に結合した際にQacRが活
性構造を取る割合により決まる
ことを明らかにしました。その
際、結合する化合物分子の大き
さ(分子量)が大きいほどQacR
の構造平衡が大きく傾き、活性
構造の割合が増えていました。

以上の結果は、結合の強い小さ
な化合物を設計することで、黄
色ブドウ球菌の多剤耐性機構を
不活化できる可能性を示します。
一方で、蛋白質の構造平衡を積
極的に利用して薬効を発揮させ
るためには、構造変化を起こし
た状態を長く保てるだけの分子
量が必要であることを示唆して
います。「そのような新たな薬
づくりを行っていくにあたって、
中分子など比較的大きな化合物
分子を合理的に設計する技術の
重要性を示すものとしても注目
される」と、研究グループは述
べています。

多剤耐性転写因子とは多剤耐性
を調節する転写因子のこと。Qa
cRは、多剤耐性転写因子の一種。

転写因子とは,遺伝子であるDNA
に特異的に結合する蛋白質の一
群で、DNAの遺伝情報をRNAに転
写する過程を促進、あるいは逆
に抑制します。転写因子はこの
機能を単独で、または他の蛋白
質と複合体を形成することによ
って実行します。

転写とは、DNAの遺伝情報をRNA
特にメッセンジャーRNA に移し
替えること。メッセンジャーRN
A の遺伝情報を蛋白質にうつす
ことを翻訳と言う。転写・翻訳
が行われて蛋白質の合成が完了
する。

多剤耐性機構の解明と新規治療

薬についての動画です。

 

 

 

 



 大勢が多剤耐性菌となる。笑















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編集後記




 大阪大学が10月4日、アディ
ポネクチンとエクソソームを介
した脂肪組織による新しい代謝
調節概念を提唱したと発表した
のは素晴らしい業績です。今回、
研究グループは、アディポネク
チンが骨格筋や心筋、血管内皮
細胞等のT-カドヘリン発現細胞
に作用し、エクソソーム産生を
促進することで全身の内分泌・
代謝調節に重要な役割を担うこ
とを明らかにしたということで
す。今後、血中のエクソソーム
レベルを調べる事で代謝性疾患
やその合併症に対する新しい診
断・治療の発展が期待されると
いうことですので、今後の研究
に期待したいと思います。
 日本医療研究開発機構(AMED)
が10月4日、核磁気共鳴法(NM
R 法)を用いて、QacRが溶液中
で多剤耐性トランスポーターqa
cA遺伝子の転写・発現を亢進す
る活性構造と抑制する不活性構
造との間をミリ秒で行き来する
構造平衡下にあること、また、
QacRが薬剤結合時に活性構造を
取る割合により、転写活性が決
定することを明らかにしたと発
表したのは素晴らしい業績です。
黄色ブドウ球菌は、抗生物質の
投与により、MRSA(多剤耐性の
ブドウ球菌)になりやすいこと
が知られています。MRSAなどの
耐性菌が生まれると抗生物質で
治療が難しくなります。しかし
今回の研究で黄色ブドウ球菌の
多剤耐性機構を不活化できる可
能性が示されたので、この可能
性を臨床で実用化されることを
期待したいと思います。

 機構についての解説を聞こう。


















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