診療マル秘裏話  号外Vol.1670 令和1年12月13日作成

作者 医療法人社団 永徳会 藤田 亨




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目次
 
1)一部の固形がん等で発がんを抑える遺伝子発見
2)がん遺伝子パネル検査に、公的医療保険が適用














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 医療界のトピックスを紹介するこのメールマガジンは
1週間に1回の割合で発行しています。もっと回数を増や
して欲しいという要望もあるのですが、私の能力のなさ
から1週間に1回が限度となっています。これからも当た
り前の医療をしながら、なおかつ貪欲に、新しい知識を
吸収し読者の皆様に提供してゆきたいと思っております。
不撓不屈の精神で取り組む所存ですのでどうかお許し下
さい。

 









 
1】一部の固形がん等で発がんを抑える遺伝子発見












 東京大学は11月20日、ATL,悪
性リンパ腫、一部の固形がんな
どで発がんを抑える遺伝子につ
いて、その発現が抑制される原
因を特定し、さらに特異的に阻
害する化合物を開発することで
新たな治療法を提案したと発表
しました。この研究は、同大大
学院新領域創成科学研究科の山
岸誠特任講師、内丸薫教授、同
大名誉教授の渡邉俊樹氏(フュ
ーチャーセンター推進機構特任
研究員)、第一三共株式会社の
本間大輔氏、荒木一司氏らの共
同研究グループによるもの。研
究成果は、米国科学雑誌「Cell
Reports」に掲載されています。
メチル化ヒストン(H3K27me3)
の異常な蓄積によるエピゲノム
異常は、多くのがんや造血器腫
瘍で見られる代表的な性質。H3
K27me3の変化によって非常に多
くの遺伝子の発現パターンが変
化し、腫瘍細胞の増殖能、走化
/転移/浸潤能、分化異常、化学
療法への耐性、宿主免疫からの
逃避機構などのさまざまな特徴
に対して、極めて重要な影響を
及ぼすことがわかっています。

これまでに悪性リンパ腫、急性
白血病などの造血器腫瘍や、乳
がん、前立腺がん、肺がん、肝
臓がん、膵臓がん、脳腫瘍など
の多くの固形がんにおいて、H3
K27me3が蓄積したエピゲノム異
常が報告され、H3K27me3を誘導
する複合体の中心的な酵素であ
るEZH2が、治療の標的となる分
子の候補として研究が進んでい
ました。しかしながら、EZH2の
遺伝子自体に異常を持たない大
半の白血病、悪性リンパ腫、固
形がんにおいて、H3K27me3がど
のように蓄積するかは不明なま
まであり、高く持続的な治療効
果の達成が重要な課題でした。
今回東京大学の研究グループは、
ATL や他の悪性リンパ腫におい
て、H3K27me3を誘導するEZH1と
EZH2の2つの酵素が腫瘍細胞内
に共存することに気づき、両分
子のクロマチン上の分布を解析
ししました。その結果、両者は
協調してH3K27me3を蓄積させる
ことが判明しました。また、多
くのがんで高頻度に見られるエ
ピゲノムに関連した遺伝子の異
常が、H3K27me3を蓄積させるこ
とも分かり、このプロセスにお
いてもEZH1とEZH2が協調して機
能することが明らかになりまし
た。

興味深いことに、EZH1またはEZ
H2のいずれかの遺伝子を不活性
化すると、もう一方の酵素が失
われた機能を補うことで高いレ
ベルのH3K27me3の蓄積が保たれ、
がん抑制遺伝子の発現も不活性
化されたままでした。この2つ
の酵素が相互に機能を補う効果
によって、がん細胞のエピゲノ
ムが保たれる恒常性は、H3K27m
e3の蓄積を標的とした治療のコ
ンセプトの障害となることが示
唆されました。そこで東京大学
の研究グループは、第一三共株
式会社と共同でEZH1とEZH2の両
方を阻害する新たな化合物(EZ
H1/2阻害物質)を開発し、ATL
などの多くの悪性リンパ腫や、
エピゲノムに関連した遺伝子に
変異を持つ多くの種類のがんに
対して、有効である実験データ
を得ました。新たな化合物は、
EZH1とEZH2による相互の補償効
果を打ち消すことで、従来のEZ
H2のみを阻害する薬と比較して
H3K27me3を減少させる高い効果
を示し、遺伝子の発現を正常化
することで抗腫瘍効果を発揮し
ました。さらに、予後が比較的
良い慢性型またはくすぶり型の
ATL や、HTLV-1やEpstein-barr
(EB)ウイルスに感染した前が
ん状態の細胞においても同様の
エピゲノム異常が存在し、さら
に新たな化合物(EZH1/2阻害物
質)が有効であることも明らか
となりました。今後、EZH1/2に
依存したエピゲノム異常を標的
とすることで、早期の治療介入
や発症予防などへの展開が期待
されます。

第一三共株式会社は、ATL を含
む再発難治T細胞リンパ腫に対
するEZH1/2阻害薬(Valemetost
at/DS-3201)の薬事承認に向け
て、その第1相臨床試験を実施
中であり、厚生労働省より先駆
け審査の指定を受けています。
また現在、再発難治ATL に対す
る第2相臨床試験の開始が予定
されています。

研究グループは、「本成果は、
本邦において基礎から臨床へと
展開したトランスレーショナル
研究であり、日本発の新薬の開
発が進み、また臨床試験の結果
によっては白血病や悪性リンパ
腫などに罹患した多くの方々に
とって大きな救いとなる可能性
がある」と、述べています。

ヒストン蛋白質の修飾について

解説している動画です。

 

 

 

 



 天界での点滴治療について、
展開した群ますます良い。 笑















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2】 がん遺伝子パネル検査に、公的医療保険が適用













 がんの発生に関連する複数の
遺伝子を網羅的に検査して、個
々の患者さんに最適な薬を探す。
そんな医療が保険診療で受けら
れるようになりました。2019年
6月、「がん遺伝子パネル検査」
と呼ばれる検査に公的医療保険
が適用されました。国立がん研
究センター先端医療開発センタ
ートランスレーショナルインフ
ォマティクス分野(千葉県柏市)
の土原一哉分野長に検査の概要
と課題を聞きました。がんは遺
伝子の変異が積み重なって発生
しますが、この20年の間に、特
定の遺伝子の働きを阻害すると
いった作用で、がんの増殖を抑
える薬剤が相次いで実用化され
ています。臨床試験(治験)中
の新薬も多数あります。

 遺伝子パネル検査は、手術で
摘出する等した患者さんのがん
組織を用いて、一度に100種
類以上の遺伝子を調べます。が
んの原因とみられる変異が見つ
かれば、それを標的とした薬が
あるかをがんの専門家会議が協
議し、主治医に助言します。検
査結果と専門家の助言を基に、
主治医と患者さんで治療方針を
検討します。

 対象となるのは血液がん以外
で、「標準的な治療法がないが
んの患者さん」や「進行または
再発がんで、確立している治療
法で効果が得られなくなった患
者さん」。検査結果から、治験
中の新薬などが効く可能性が認
められれば、治験に参加するこ
となどが可能になります。とは
いえ、「検査を受けた人のうち、
検査結果に基づいた治療を受け
られるのは10~20%程度です」
と土原分野長は言っています。
効く可能性のある薬剤が見つか
っても、実際にその患者さんに
有効で安全かどうかは未知数だ
ということです。

 また、患者さんが検査を受け
てから主治医に結果を聞くまで、
1カ月半~2カ月かかるとみら
れています。新薬の治験に参加
するとしたら、手続きにさらに
時間を要します。想定外の遺伝
性のがんに関係する遺伝子変異
が見つかるケースもあり、主治
医から本人、本人から家族にど
のように伝えるかを決めておく
ことも必要です。

 検査は全国167カ所の病院
で受けられます(2019年4月時
点)。病院の一覧表は厚生労働
省のウェブサイトに掲載されて
います。検査費用は56万円。3
割負担なら約17万円で、高額療
養費制度を利用すればさらに軽
減されます。データは患者さん
の同意のもとに中央機関(がん
ゲノム情報管理センター)に登
録され、今後の研究目的に供さ
れます。

がん遺伝子パネル検査について

解説している動画です。

 

 

 

 



 官吏が情報管理を行う。笑















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編集後記



 東京大学が11月20日、ATL,悪
性リンパ腫、一部の固形がんな
どで発がんを抑える遺伝子につ
いて、その発現が抑制される原
因を特定し、さらに特異的に阻
害する化合物を開発することで
新たな治療法を提案したと発表
したのは偉大な業績です。正に
理詰めの治療法と言えましょう。
メチル化ヒストン(H3K27me3)
の異常な蓄積によるエピゲノム
異常は、多くのがんや造血器腫
瘍で見られる代表的な性質であ
り、H3K27me3の変化によって非
常に多くの遺伝子の発現パター
ンが変化し、腫瘍細胞の増殖能、
走化/転移/浸潤能、分化異常、
化学療法への耐性、宿主免疫か
らの逃避機構などのさまざまな
特徴に対して、極めて重要な影
響を及ぼすことが分かってきた
のは、素晴らしい業績です。
 2019年6月、「がん遺伝子パ
ネル検査」と呼ばれる検査に公
的医療保険が適用されたのは、
喜ばしいことです。がんは遺伝
子の変異が積み重なって発生し
ますが、この20年の間に、特定
の遺伝子の働きを阻害するとい
った作用で、がんの増殖を抑え
る薬剤が相次いで実用化されて
いるのは知っていました。遺伝
子パネル検査は、手術で摘出す
る等した患者さんのがん組織を
用いて、一度に100種類以上
の遺伝子を調べることから始ま
ります。がんの原因とみられる
変異が見つかれば、それを標的
とした薬があるかをがんの専門
家会議が協議し、主治医に助言
するということで、検査結果と
専門家の助言を基に、主治医と
患者さんで治療方針を検討する
という夢のような連携を行う治
療と言えましょう。

 競技について協議して狭義の
定義に従って行動する。  笑















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