診療マル秘裏話  号外Vol.1696 令和2年1月12日作成

作者 医療法人社団 永徳会 藤田 亨




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目次
 
1)AIが、がんに関する知識を自力で獲得する技術
2)潰瘍性大腸炎の大腸組織で特定遺伝子変異蓄積














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 医療界のトピックスを紹介するこのメールマガジンは
1週間に1回の割合で発行しています。もっと回数を増や
して欲しいという要望もあるのですが、私の能力のなさ
から1週間に1回が限度となっています。これからも当た
り前の医療をしながら、なおかつ貪欲に、新しい知識を
吸収し読者の皆様に提供してゆきたいと思っております。
不撓不屈の精神で取り組む所存ですのでどうかお許し下
さい。

 









 
1】 AIが、がんに関する知識を自力で獲得する技術











 理化学研究所(理研)は12月
18日、医師の診断情報が付いて
いない病理画像から、がんに関
わる知識をAIが自力で獲得する
技術を開発し、がんの再発の診
断精度を上げる新たな特徴を見
つけることに成功したと発表し
ました。この研究は、理研革新
知能統合研究センター病理情報
学チームの山本陽一朗チームリ
ーダー、日本医科大学泌尿器科
の木村剛准教授らの研究グルー
プによるものです。研究成果は、
英国のオンライン科学雑誌「Na
ture Communications 」に掲載
されています。近年、人工知能
(Artificial Intelligence, A
I) の持つ高い可能性を医療に
応用するための研究が盛んに行
われています。一方で、現在の
AI技術の主流であるディープラ
ーニング(深層学習)では、学
習にビッグデータを必要とする
ため、医師の診断情報が付いた
大量の医療画像をどのように集
めるかが、実用化に向けた課題
となっていました。また、AIに
おける解析根拠はブラックボッ
クスだといわれていますが、医
療への応用には、AIの解析根拠
が重要視されており、現存する
医学知識を上回る新知見の獲得
のためにも、病理画像のように
豊富な情報を含むデータから、
機械学習を通して「人間が理解
できる情報」を自動で取得する
技術が求められていました。

今回研究グループは、複数のデ
ィープラーニングと非階層型ク
ラスタリングを用いることで、
病理画像から人間が理解できる
情報を自動で取得する新たなAI
技術の開発に成功しました。医
療分野では今まで、医師が教え
た診断をAIが学習する、すなわ
ち教師以上の分類はできない「
教師あり学習」が主に使用され
てきましたが、今回の研究では
医師の診断を必要としない「教
師なし学習」により獲得した特
徴を、人間が理解できるように
変換しました。再発期間のみを
用いた最適な重み付けをAIに行
わせることで、これまで不可能
であったがんの未知なる情報の
獲得を目指しました。この新し
い技術を、医師の診断情報が付
いていない100 億画素を超える
全包埋・全割した前立腺の病理
画像(AI学習用の分割画像にす
ると、合計約11億枚に相当)に
対して適用したところ、病理画
像と予後情報のみから、詳細に
分類されたがんの情報をAIに自
動で抽出させることに成功しま
した。このAIが作成した分類に
は、現在世界中で使用されてい
るがん分類(グリソンスコア)
が含まれており、さらに、これ
まで専門家も気づいていなかっ
た「がん領域以外の間質の変化」
も、がんの再発の診断精度を上
げる特徴として読み取られてい
ました。この、AIにより見つけ
られた病理学的特徴は、今回の
報告論文の中で、AIが作成した
初めての病理画像アトラスとし
て閲覧できます。

次に、AIが見つけたこれらのが
んの特徴が再発予測に役立つか
を確認するため、日本医科大学
病院の20年間分の1万3,188枚の
前立腺の病理画像(AI学習用の
分割画像にすると約860 億枚に
相当)を用いて、がんの予後予
測の検証を実施しました。その
結果、現在世界中で使用されて
いる前立腺がんの診断基準(AU
C = 0.744)よりも高い精度(A
UC = 0.820)で再発予測ができ
ることが判明しました。さらに、
日本医科大学病院の症例だけを
用いてAIに学習させた結果が、
聖マリアンナ医科大学病院と愛
知医科大学病院においても利用
できるかどうかを調べました。
これら2つの大学病院の2,276枚
の前立腺の病理画像(AI学習用
の分割画像にすると約100 億枚
に相当)に対して検証したとこ
ろ、日本医科大学における予測
精度とほぼ同等の再発予測がで
きることが分かりました(AUC
= 0.845)。 これは、今回開発
された技術により、AIが病院や
大学といった施設や地域を越え
て、一般化された情報を学習し
たことを示しています。

最後に、AIが見つけた特徴と病
理医の診断を組み合わせて再発
予測をしたところ、それぞれが
単独で予測するよりも、さらに
予測精度が上がりました(施設
内検証:AUC = 0.842、 多施設
による検証: AUC = 0.889)。
この結果は、AIと人間は病理画
像の解析に対して得意とする点
が異なり、お互いに補い合うこ
とで精度向上につながることを
示しています。

医療においてAIを安心して使用
するためには、医師が理解可能
な根拠を示すことができる技術
が不可欠です。さらに、情報量
に富んだ画像から、人間が理解

できる情報を引き出すことで、
既存の基準を超えた新たな知識
の獲得が可能になります。今回
の研究成果は、手術後の高精度
ながんの再発予測法として、個
々に合った治療選択に貢献する
とともに、画像から新たな知識
を獲得するための自動解析手法
として役立つものです。さらに、
ブラックボックスといわれてい
るAIの解析根拠をひも解く一歩
として、医療において安心して
使用できるAIの実現に貢献する
と期待されます。

このニュースのニュース動画で

す。

 

 

 



 基準となる軍隊に帰順する。















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2】 潰瘍性大腸炎の大腸組織で特定遺伝子変異蓄積














 慶應義塾大学は12月19日、潰
瘍性大腸炎の大腸組織において、
特定の遺伝子変異が蓄積してい
ることを発見したと発表しまし
た。この研究は、同大医学部坂
口光洋記念講座(オルガノイド
医学)の佐藤俊朗教授らの研究
グループによるものです。研究
成果は、英科学誌「Nature」の
オンライン版に掲載されていま
す。潰瘍性大腸炎は、大腸に原
因不明の慢性炎症が生じる炎症
性腸疾患のひとつです。国内の
患者数は約17万人以上と、増加
の一途をたどっています。また、
罹病期間が長くなると大腸がん
の発生が増加すると報告されて
いますが、なぜ大腸がんが増え
るのか、その明確な理由は解明
されていませんでした。

ヒトの組織の多くは幹細胞によ
って維持されていますが、発が
んには幹細胞そのものに遺伝子
変異が生じることが必要となり
ます。一方、大腸では10~20個
の幹細胞が陰窩(いんか)と呼
ばれるくぼみの中で、数か月の
期間で、全て単一の幹細胞とそ
の子孫細胞に置き換わることが
知られています。大腸では狭い
領域に陰窩が無数に存在するた
め、従来の方法では、変異をも
つ幹細胞と持たない幹細胞のク
ローンが混在したサンプルを用
いることしかできず、個々の幹
細胞にどのように遺伝子変異が
蓄積されているのかを調べるこ
とができませんでした。しかし、
近年オルガノイド培養技術の応
用により、単一の幹細胞クロー
ンを培養して増殖し、各陰窩の
幹細胞を個別に解析する手法が
開発されました。その結果、正
常の大腸上皮幹細胞では年齢に
比例して遺伝子変異が蓄積して
いることが報告され、遺伝子変
異の蓄積には個人差があること
も示されました。今回研究グル
ープは、この個人差に腸内環境
が関与しているのではないかと
推察されています。オルガノイ
ド培養技術を応用し、健常人と
潰瘍性大腸炎患者の大腸組織の
体外培養を行い、それぞれの幹
細胞でどのように遺伝子変異が
生じているかを明らかにするた
めに解析を行いました。その結
果、罹病期間が長い潰瘍性大腸
炎の患者さんの大腸上皮細胞に
は、健常人の大腸上皮に比べて、
より多くの遺伝子変異が検出さ
れました。しかし炎症を原因と
する遺伝子変異の頻度の増加は
小さいことが分かりました。そ
こで、どの遺伝子に変異が蓄積
しているかを調べた結果、潰瘍
性大腸炎の患者さんの大腸上皮
幹細胞では、がんの発症に寄与
する遺伝子変異は比較的少なく、
一方で、炎症性サイトカインの
ひとつであるIL-17 を介した炎
症シグナルの経路上に、さまざ
まな遺伝子変異があることを発
見しました。

この遺伝子変異のクローンの広
がりを調べるため、生検鉗子で
採取された領域に含まれる全て
の大腸幹細胞に、どの程度これ
らの遺伝子変異が生じているか、
より多くの患者さん由来のサン
プルを用いて探索しました。調
査した潰瘍性大腸炎の患者さん
45人のうち、6割の27人でこれ
らの遺伝子変異が確認され、ま
た、大腸がんを合併している患
者さんでは75%以上の症例で、
がんではない大腸上皮細胞に遺
伝子変異が生じていました。さ
らに、これらの遺伝子変異をも
つ幹細胞のクローンが増えてい
ることを確認しました。活動性
潰瘍性大腸炎の患者さんの大腸
上皮細胞は、炎症により慢性的
に細胞傷害が生じており、IL-1
7 はそれに重要な役割をもつこ
とが知られています。そこで、
発見した遺伝子変異が生じてい
る細胞と正常な細胞において、
IL-17 で刺激した際の細胞傷害
性について比較しました。その
結果、正常な大腸上皮細胞はア
ポトーシスを起こしましたが、
遺伝子変異が生じた大腸上皮細
胞はアポトーシスに耐性を示し、
IL-17 の存在下(IL-17 による
炎症下)でも生存可能であるこ
とが確認されました。このこと
から、生体内での炎症下におい
て、正常な細胞は細胞傷害が生
じ脱落するのに対し、今回同定
した遺伝子変異が生じた細胞は、
細胞傷害を回避し生存し続ける
ため、徐々に変異細胞のクロ
ーンの領域が広がっていくこと
が考えられました。つまり、潰
瘍性大腸炎の患者さんの大腸で
は、炎症環境で生存しやすい遺
伝子変異の上皮細胞が選択的に
増え、正常な大腸上皮細胞を置
き換えていくことが明らかにな
りました。

ヒトの大腸は遺伝子変異を蓄積
することによって大腸がんを発
生することが既に報告されてい
ますが、今回の研究により、慢
性炎症などの腸内環境の変化に
適応するための変異も蓄積して
いくことが判明しました。研究
グループは、「遺伝子変異が生
じた大腸上皮細胞の蓄積が潰瘍
性大腸炎の病態やがん化にどの
ような影響を及ぼすか、今後の
研究が期待される」と、述べて
います。

潰瘍性大腸炎について解説して

いる動画です。

 

 

 

 



 班名が判明した。笑













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編集後記




 理化学研究所(理研)が12月
18日、医師の診断情報が付いて
いない病理画像から、がんに関
わる知識をAIが自力で獲得する
技術を開発し、がんの再発の診
断精度を上げる新たな特徴を見
つけることに成功したと発表し
たのは、素晴らしい業績です。
現在のAI技術の主流であるディ
ープラーニング(深層学習)で
は、学習にビッグデータを必要
とするため、医師の診断情報が
付いた大量の医療画像をどのよ
うに集めるかが、実用化に向け
た課題となっていたということ
です。 今回の研究では、医師
の診断を必要としない「教師な
し学習」により獲得した特徴を、
人間が理解できるように変換し
ているとされています。本当に、
優れた成果と言えましょう。
 慶應義塾大学が12月19日、潰
瘍性大腸炎の大腸組織において、
特定の遺伝子変異が蓄積してい
ることを発見したと発表したの
は偉大な業績です。従来の方法
では、変異をもつ幹細胞と持た
ない幹細胞のクローンが混在し
たサンプルを用いることしかで
きず、個々の幹細胞にどのよう
に遺伝子変異が蓄積されている
のかを調べることができなかっ
たのですが、近年オルガノイド
培養技術の応用により、単一の
幹細胞クローンを培養して増殖
し、各陰窩の幹細胞を個別に解
析する手法が開発され、その結
果、正常の大腸上皮幹細胞では
年齢に比例して遺伝子変異が蓄
積していることが報告されまし
た。その上、遺伝子変異の蓄積
には個人差があることも示され
ました。本当に凄い技術革新だ
と思います。

 非礼を詫びることに比例して
株が上がった。      笑













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