診療マル秘裏話  号外Vol.1700 令和2年1月17日作成

作者 医療法人社団 永徳会 藤田 亨




★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★













目次
 
1)カテキンが遺伝子発現に関わる蛋白質の機能を制御
2)卵巣がん患者の病巣IL-34が,悪性度高める一因














◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆









 医療界のトピックスを紹介するこのメールマガジンは
1週間に1回の割合で発行しています。もっと回数を増や
して欲しいという要望もあるのですが、私の能力のなさ
から1週間に1回が限度となっています。これからも当た
り前の医療をしながら、なおかつ貪欲に、新しい知識を
吸収し読者の皆様に提供してゆきたいと思っております。
不撓不屈の精神で取り組む所存ですのでどうかお許し下
さい。

 









 
1】 カテキンが遺伝子発現に関わる蛋白質の機能を制御











 京都府立医科大学は12月24日、
緑茶に含まれるカテキンが遺伝
子発現に関わる蛋白質の機能を
制御する新たな仕組みを解明し
たと発表しました。これは、東
京大学大学院薬学系研究科の荻
原洲介大学院生、小松徹特任助
教、浦野泰照教授、京都府立医
科大学大学院医学研究科の伊藤
幸裕准教授、大阪大学産業科学
研究所の鈴木孝禎教授、東京大
学創薬機構の小島宏建特任教授、
岡部隆義特任教授、長野哲雄客
員教授らの研究グループによる
ものです。本研究成果は、「Jo
urnal of the American Chemic
al Society」に掲載されていま
す。

ヒトの細胞には約2万種類の遺
伝子が存在し、これらの発現の
組み合わせによって、多様な細
胞の機能が維持されています。
また、遺伝子発現は、エピジェ
ネティック制御因子によってコ
ントロールされており、この仕
組みを理解することは、生命の
成り立ちや疾患のメカニズムを
知る上でも重要な意味を持ちま
す。制御因子のうちで代表的な
ものが、ヒストンなどの蛋白質
やDNA に「メチル基」という化
学構造を修飾する仕組みです。
疾患と関わる細胞内のメチル化
状態の変化の理解を目指す研究
や、これを担うメチル基転移酵
素のはたらきを制御する薬剤の
開発が精力的に進められていま
す。

一方、近年の研究から、細胞内
のメチル基転移酵素の活性は、
これらの酵素がメチル基の供給
源として用いる補酵素「S-アデ
ノシルメチオニン」(以下、SA
M )濃度の変化によって制御さ
れることが明らかになっていま
す。SAM 濃度の変化が、がんや
生活習慣病などの疾患の成り立
ちと関わる例も報告され、特に
大腸がんにおいては、初期段階
からSAM の濃度上昇が見られ、
これがヒストンなどのメチル化
状態の変化を介してがんの悪性
化に寄与していることが示唆さ
れています。疾患と関わるSAM
濃度の変化の仕組みを理解し、
これを制御する方法論の開発が
求められています。研究グルー
プはまず、以前の研究において
開発した蛍光プローブを応用し
て、細胞内のSAM 濃度の変化を
より高いシグナル/ノイズ比で
検出できる実験系を確立しまし
た。この実験系を利用して、大
腸がん細胞のSAM 濃度を低下さ
せる薬剤の探索研究を実施しま
した。東京大学創薬機構が保有
する既存の薬剤や生理活性化合
物からなる1,600 化合物のライ
ブラリを用いたスクリーニング
をおこなったところ、大腸がん
細胞のSAM 濃度を低下させる薬
剤を複数発見することに成功し
ました。

これらの化合物の中に、緑茶な
どに含まれる天然物であるカテ
キンやその類似化合物が多く含
まれていることに着目し、その
メカニズムについて精査したと
ころ、大腸がん細胞が発現する
薬物代謝酵素の一種である「カ
テコールメチルトランスフェラ
ーゼ」(COMT)が、これらのカ
テキン類をメチル化する際にSA
M を消費することによって、細
胞のSAM 濃度の減少が引き起こ
されることが判明しました。そ
して、この作用は、培養細胞系
だけでなく、大腸がんのモデル
マウスにカテキンを含む餌を食
べさせて飼育した場合にも観察
されることが明らかとなりまし
た。

次に、カテキンによるSAM 濃度
の低下が、実際に大腸がん細胞
の表現系に影響を与えるかにつ
いて検証しました。大腸がんに
おけるヒストン蛋白質のメチル
化状態の変化を調べたところ、
カテキンの作用によって、大腸
がん細胞のヒストンのメチル化
レベルが大幅に低下し、内在性
のアポトーシス誘導因子によっ
て引き起こされる細胞死への感
受性が大きく高まることが確認
されました。以上の結果から、
カテキンがCOMTの活性を介して
SAM 濃度を低下させ、大腸がん
細胞の表現型を制御するという
新たな作用の存在を示したこと
になります。

現在までに、緑茶やその主成分
であるカテキン類の健康への効
果について多くの研究がなされ
ています。カテキンの細胞レベ
ルでの作用として、抗酸化作用、
酵素の阻害、蛋白質の化学修飾
などさまざまなものが知られて
いる一方で、これらの作用から
だけでは、その健康への効果は
十分に説明されていません。「
今回新たに見出されたカテキン
によるSAM 濃度の低下作用と、
これによる蛋白質のメチル化状
態の制御作用は、緑茶、カテキ
ンの健康への効果を説明する鍵
となる新たな知見を与えるもの
である」と、研究グループは述
べています。

カテキンについて解説している

動画です。

 

 

 



 治験で新たな知見を得る。笑













◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆















2】 卵巣がん患者の病巣IL-34が,悪性度高める一因














 北海道大学は12月24日、卵巣
がん患者の病巣における液性生
理活性因子インターロイキン-3
4(IL-34)が、がんの悪性度を
高める一因であることを初めて
解明したと発表しました。この
研究は、同大遺伝子病制御研究
所の清野研一郎教授、同大大学
院医学研究院産婦人科学教室の
渡利英道教授、聖マリアンナ医
科大学産婦人科学教室の鈴木直
教授、滋賀医科大学医学部臨床
腫瘍学講座の醍醐弥太郎教授(
東京大学医科学研究所特任教授
を兼任)、神奈川県立がんセン
ター臨床研究所の宮城洋平所長
らの研究グループによるもの。
研究成果は、「International
Immunology」にオンライン掲載
されています。卵巣がんは婦人
科がんにおいて子宮がんに次い
で2番目に致死率の高いがんと
して知られています。初期にお
ける自覚症状が乏しいため、卵
巣がん患者の多くは進行期での
診断となることが大きな問題と
なっています。また、発見後は
原発巣の外科的摘出及び一次化
学療法による治療が一般的です
が、その後の再発率が高いとさ
れています。そのため、卵巣が
ん患者の治療効率を高めるには、
がんの進行および再発に寄与す
る要因の特定が必要です。

サイトカインのひとつであるIL
-34 の発現は、正常なヒトでは
脳や皮膚に限定されていますが、
近年さまざまな種類のがん種の
病巣において発現が確認され、
がんの進行や転移に関与するこ
とが報告されています。しかし
現在までに卵巣がんにおけるIL
-34 の作用に関する報告はあり
ませんでした。そこで今回、研
究グループは、新たな治療の標
的となり得るIL-34に着目し、
卵巣がんの悪性度への寄与を検
討しました。まず、北海道大学
大学院医学研究院産婦人科学教
室(婦人科腫瘍学)、聖マリア
ンナ医科大学産婦人科学教室、
文部科学省科学研究費新学術領
域研究「コホート・生体試料支
援プラットフォーム(CoBiA)」
から提供を受けた臨床検体を用
い、これらの検体におけるIL-3
4 の発現と検体情報から、卵巣
がんの病巣におけるIL-34 とが
んの悪性度及び患者さんの予後
との関連性を検証しました。そ
の結果、ステージが3、4にまで
達している患者さんの検体にお
けるIL-34 の発現率は、ステー
ジが1、2の患者よりも高いと判
明しました。また、外科的手術
及び抗がん剤治療を行った後に
再発した検体では、原発巣と比
べIL-34 の発現が高いレベルで
検出されました。

また、ヒトの卵巣がん細胞株で
あるKF28、OVTOKO、OVISE およ
びマウスの卵巣がん細胞株であ
るHM-1におけるIL-34 の発現を
リアルタイムPCRやELISAと呼ば
れる手法で解析した結果、抗が
ん剤を添加した後に生存した細
胞では、IL-34 の産生に必要な
遺伝子の発現が上昇することを
発見した。

さらに、IL-34 を発現するHM-1
から、CRISPR-Cas9 システムを
用いてIL-34 ノックアウトHM-1
株(IL-34KO HM-1)を樹立し、
元株であるHM-1およびIL-34KO
HM-1のそれぞれを、実験用マウ
スの卵巣に直接移植しました。
その後、マウスの生存期間の観
察と原発巣である卵巣腫瘍内に
浸潤している免疫細胞を解析す
ることで、がん細胞に由来する
IL-34 の卵巣がんの悪性度への
寄与を検証しました。その結果、
IL-34KO HM-1を移植した群にお
いて有意に生存期間が延長され
ることが判明しました。加えて、
卵巣がん細胞の移植後10日目に
原発巣である卵巣の腫瘍を摘出
し、腫瘍内に浸潤する細胞を解
析したところ、がん細胞を攻撃
する役割を担うキラーT細胞の
割合はIL34KO HM-1 が形成する
腫瘍で高い傾向にあることが分
かりました。これらの結果から、
卵巣がん細胞から産生されるIL
-34 は腫瘍内の免疫環境に働き
かけ、がんの悪性度を高めてい
る可能性が示唆されました。研
究グループは、「卵巣がんに対
する治療における新たな治療の
標的となる分子としてIL-34 が
有用である可能性がある」と、
述べています。

卵巣がんについて解説している

動画です。

 

 

 



 酸性の溶液が産生された。笑















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆















編集後記



 京都府立医科大学が12月24日、
緑茶に含まれるカテキンの遺伝
子発現に関わる蛋白質の機能を
制御する新たな仕組みを解明し
たと発表したのは、素晴らしい
業績です。近年の研究から細胞
内のメチル基転移酵素の活性は、
これらの酵素がメチル基の供給
源として用いる補酵素「S-アデ
ノシルメチオニン」(以下、SA
M )濃度の変化によって制御さ
れることが明らかになっていて、
SAM 濃度の変化が、がんや生活
習慣病などの疾患の成り立ちと
関わる例も報告され、特に大腸
がんにおいては、初期段階から
SAM の濃度上昇が見られ、これ
がヒストンなどのメチル化状態
の変化を介してがんの悪性化に
寄与していることが示唆されて
いるというのは初耳でした。カ
テキンがCOMTの活性を介してSA
M 濃度を低下させ、大腸がん細
胞の表現型を制御するという新
たな作用の存在を示したという
のは画期的な知見であると思い
ます。
 北海道大学が12月24日、卵巣
がん患者の病巣における液性生
理活性因子インターロイキン-3
4(IL-34)が、がんの悪性度を
高める一因であることを初めて
解明したと発表したのは偉大な
業績です。 卵巣がん細胞から
産生されるIL-34 は腫瘍内の免
疫環境に働きかけ、がんの悪性
度を高めている可能性が示唆さ
れたという結論から、卵巣がん
の治療においては新たな治療の
標的となる分子としてIL-34 が
有用である可能性が高くなった
と考えられます。今後IL-34 を
標的とする薬剤がスクリーニン
グされるのは時間の問題と言え
るでしょう。一般薬剤の他に、
抗体医薬や核酸医薬が開発され
る可能性もでてきました。また
卵巣がんだけではなく、IL-34
の発現が確認された各種悪性腫
瘍でも同じく一般薬剤や、抗体
医薬や核酸医薬の開発が期待さ
れると言えるでしょう。

 今後の治療方針は、コンゴー
レッドで染色してから考える事
にした。         笑















************************

このメールマガジンは以下の配信システムを利用して
発行しています。
  解除の手続きは下記ページよりお願い致します。
「まぐまぐ」https://www.mag2.com/m/0000121810.html
(イジニイワト)

発行者名  医療法人永徳会 皿沼クリニック院長 
藤田 亨
職業    医師の箸くれ(はしくれ)
運営サイト https://www.eitokukaisalanuma.or.jp/
ご意見・ご感想・励ましのお便りお待ちしております。
sara2162@atlas.plala.or.jp
このマガジンの掲載記事を無断で転載・使用すること
を禁じます。