診療マル秘裏話  号外Vol.1722 令和2年2月11日作成

作者 医療法人社団 永徳会 藤田 亨




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目次
 
1)AM投与安全性評価を主目的の医師主導治験実施
2)上気道内細菌叢が小児の軽度喘息重症度と関連














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 医療界のトピックスを紹介するこのメールマガジンは
1週間に1回の割合で発行しています。もっと回数を増や
して欲しいという要望もあるのですが、私の能力のなさ
から1週間に1回が限度となっています。これからも当た
り前の医療をしながら、なおかつ貪欲に、新しい知識を
吸収し読者の皆様に提供してゆきたいと思っております。
不撓不屈の精神で取り組む所存ですのでどうかお許し下
さい。

 









 
1】 AM投与安全性評価を主目的の医師主導治験実施











 国立循環器病研究センターは
1月16日、急性期非塞栓性脳梗
塞患者さんを対象にペプチドホ
ルモン「アドレノメデュリン(
AM)」投与の安全性評価を主目
的とした医師主導治験を2020年
1月16日より開始すると発表し
ました。この研究は、同センタ
ー脳神経内科の猪原匡史部長、
吉本武史医師、データサイエン
ス部の角田良介プロジェクトマ
ネージャーらと、宮崎大学医学
部内科学講座循環体液制御学分
野の北村和雄教授らによるもの
です。

 血栓溶解療法、血管内治療法
といった脳梗塞急性期治療の進
歩により、閉塞血管の再開通率
は70~80%となり、多くの患者
さんがその恩恵を受けるように
なりました。しかし、依然とし
て脳卒中の死亡者数は年間11万
人にのぼります。死亡には至ら
なかった場合であっても、脳梗
塞をきっかけに寝たきりや認知
症を発症するケースが多く、そ
の医療コストは年間1兆円を超
えます。したがって、脳梗塞発
症・治療後のQOL を改善するた
めには、脳梗塞により生じた脳
の組織障害・機能障害を回復さ
せること、治療により再開した
血流を利用して再生を促すこと
が重要です。

 血栓溶解療法、血管内治療法
といった脳梗塞急性期治療の進
歩により、閉塞血管の再開通率
は70~80%となり、多くの患者
さんがその恩恵を受けるように
なりました。しかし、依然とし
て脳卒中の死亡者数は年間11万
人にのぼります。死亡には至ら
なかった場合であっても、脳梗
塞をきっかけに寝たきりや認知
症を発症するケースが多く、そ
の医療コストは年間1兆円を超
えます。したがって、脳梗塞発
症・治療後のQOL を改善するた
めには、脳梗塞により生じた脳
の組織障害・機能障害を回復さ
せること、治療により再開した
血流を利用して再生を促すこと
が重要となります。

 近年、AMと炎症との関連が注
目されています。敗血症を起こ
したマウスへのAM投与で、血行
動態が改善し、炎症が軽減する
ことが報告されています。また、
脳梗塞に対するAM投与の有効性
は各種の動物実験で示されてき
ました。猪原匡史部長らは、脳
循環不全後に、AMが血管新生を
誘導し、炎症を抑制して、組織
を保護することを示しました。
その他、京都大学の研究チーム
により、脳梗塞モデルマウスに
AMを投与すると脳梗塞が縮小す
ることが報告され、順天堂大学
の研究チームにより、体内のAM
を少なくした動物では、脳梗塞
が拡大することが報告されてい
ます。

 AMに関しては、これまでに炎
症性腸疾患(IBD )、うっ血性
心不全、急性心筋梗塞、陳旧性
脳梗塞の患者さんへのAM投与の
臨床研究が報告されており、い
ずれも大きな有害事象は生じて
いません。また臨床試験として
は、健常者を対象とした第1相
試験が完了し、現在、潰瘍性大
腸炎とクローン病を対象とした
AMの治験が行われています。

 AMはヒトの体内に存在する生
理活性物質であることから、安
全性のリスクは相対的に小さい
と考えられます。今回は、新た
に脳梗塞で臨床応用を目指す上
での安全性を検討するため、急
性期脳梗塞患者を対象にAM投与
の安全性評価を主目的とした医
師主導治験実施に至りました。
治験のデザインは複数コホート
並行群間比較試験で、対照の種
類はプラセボ対照、盲検化のレ
ベルは二重盲検です。目標症例
数は60症例としています。

 AMによって、脳梗塞の予後・
QOLを2割改善できれば、4000億
円/年以上の経済効果が,期待さ
れる、と研究グループは述べて
います。

アドレノメデュリン(adrenome
dullin;AM)は,ヒト褐色細胞
腫組織から発見された強力な血
管拡張作用を有する生理活性ペ
プチドです.循環器疾患や炎症
性疾患では産生が増加し,心血
管保護作用,血管新生作用や抗
炎症作用など多彩な生理作用を
有することが判明しており,近
年AMを治療薬として応用するた
めの臨床研究が実施されていま
す.

ペプチドホルモンとステロイド

ホルモンについて解説している

動画です。

 

 

 

 



 生理活性ペプチドの作用を、
整理する。        笑










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2】 上気道内細菌叢が小児の軽度喘息重症度と関連











 近年、ヒトの体内の常在細菌
叢に関する研究が進み、さまざ
まな疾患との関連が数多く報告
されています。今回新たに、上
気道内の細菌叢が小児における
軽度~中程度の喘息の重症度と
関連していることが示唆されま
した。米・University of Conn
ecticutのYanjiao Zhou氏らが、
Nat Commun(2019; 10: 5714)
に報告しました。米国における
18歳未満の小児喘息患者は、60
0万人以上(12人に1人に相当)
に上ります。米国喘息・アレル
ギー財団(AAFA)によると、喘
息は主要な慢性小児疾患であり、
小児が学校を休む最大の原因と
なっています。

 今回の上気道の細菌叢に関す
る研究は、軽度~中等度の喘息
を有する5~11歳の小児214 人
を対象とした臨床試験Step Up
Yellow Zone Inhaled Corticos
teroids to Prevent Exacerbat
ions(STICS) と同時に実施さ
れました。この臨床試験は、米
国立心肺血液研究所(NHLBI )
の資金提供を受けて喘息の研究
を行っている医療センターの全
国ネットワークAsthmaNet の一
部として行われました。

 STICS の目的は、喘息が悪化
する最初の徴候が現れた段階で
吸入ステロイド薬(ICS )の用
量を5倍にする群と、低用量で
維持する群で有効性を比較する
ことでした。その結果、増量し
たICS による便益はなかったこ
とが既に報告されています(N
Engl J Med 2018; 378: 891-90
1)。

 同試験中に、319 の鼻腔粘液
サンプルを収集し、上気道細菌
叢について解析しました。サン
プルは全参加者で喘息がコント
ロールされていた試験開始時、
喘息コントロール不良の初期徴
候が現れた段階(イエローゾー
ン:YZ)の2度収集されました。
解析の結果、YZになった小児で
は上気道にブドウ球菌、連鎖球
菌、Moraxella など、疾患と関
連する細菌が存在する割合が高
いことが発見されました。

 一方、気道細菌叢においてCo
rynebacteriumおよびDolosigra
nulumの比率が高い小児では、Y
Zになる割合が最も低く(P=0.
005)、2回以上のYZを経験する
までの期間は最も長かったよう
です(P=0.03 )。これらのこ
とから,Corynebacteriumおよび
Dolosigranulumの比率が高い気
道内細菌叢は、喘息症状が良好
にコントロールされている期間
の長さと関連していることが分
かりました。

 さらに、CorynebacteriumとD
olosigranulum で多く占められ
ていた気道内細菌叢が、Moraxe
lla の比率が高い細菌叢に変化
した小児は、他の種類の変化を
起こした小児と比べて、喘息症
状が悪化するリスクが最も高い
ことも明らかになりました (P
=0.04)。また、YZになった時
点での細菌叢におけるCoryneba
cterium の相対比は、喘息の重
症化と逆相関していました(P=
0.002)。

 Zhou氏らは「われわれのデー
タは、良好な状態から喘息にな
った小児において気道内細菌叢
の急速な変化が生じることを実
証した。細菌叢の変化のパター
ンが喘息の増悪に重要な役割を
果たしている可能性がある」と
述べています。今後はこれらの
結果を基に、喘息の重症度と細
菌叢との因果関係を明らかにす
るため、気道内細菌叢をコント
ロールしたマウスで研究を行う
予定ということです。

気管支喘息について解説してい

る動画です。

 

 

 

 



 最近の細菌は、耐性菌が多い。















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編集後記


 国立循環器病研究センターは
1月16日、急性期非塞栓性脳梗
塞患者を対象にペプチドホルモ
ン「アドレノメデュリン(AM)」
投与の安全性評価を主目的とし
た医師主導治験を2020年1月16
日より開始すると発表したのは
喜ばしい限りです。「アドレノ
メデュリン(AM)」という名称
も、その多様な生理活性も初耳
でした。このペプチドは、元々
人間の身体の中にあるものなの
で、免疫寛容から免疫の攻撃を
受けることは、無さそうです。
動物実験では、潰瘍性大腸炎の
モデルマウスなどで顕著な潰瘍
の縮小を認めているそうで、こ
のペプチドは急性期非塞栓性脳
梗塞の患者さんにおいても臨床
的効果が期待できそうです。
 近年、ヒトの体内の常在細菌
叢に関する研究が進み、さまざ
まな疾患との関連が数多く報告
されています。今回新たに、上
気道内の細菌叢が小児における
軽度~中程度の喘息の重症度と
関連していることが示唆された
のは素晴らしい業績です。腸内
の細菌叢が炎症性腸疾患の症状
と相関する研究は、たくさんな
されていると思いますが、呼吸
器での気道内の細菌叢が喘息の
重症度と相関しているなどとは、
夢にも思いませんでした。気道
内細菌叢を変えることによって
喘息の重症度を変えることがで
きるようになることを切に願っ
て止みません。

 免疫寛容の機構が肝要だ。笑















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