診療マル秘裏話  号外Vol.1752 令和2年3月17日作成

作者 医療法人社団 永徳会 藤田 亨




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目次
 
1)入院後進行性腎疾患高リスク患者を高精度特定
2)下肢末梢動脈疾患ココア摂取群で,歩行距離が延長















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 医療界のトピックスを紹介するこのメールマガジンは
1週間に1回の割合で発行しています。もっと回数を増や
して欲しいという要望もあるのですが、私の能力のなさ
から1週間に1回が限度となっています。これからも当た
り前の医療をしながら、なおかつ貪欲に、新しい知識を
吸収し読者の皆様に提供してゆきたいと思っております。
不撓不屈の精神で取り組む所存ですのでどうかお許し下
さい。

 









 
1】 入院後進行性腎疾患高リスク患者を高精度特定











 尿中の過剰な蛋白質を測定す
る簡易な検査で、急性腎障害(
AKI )による入院後の進行性腎
疾患高リスク患者さんを高精度
に特定できることが示されまし
た。検査で退院3カ月後の尿中
アルブミン/クレアチニン比(A
CR)レベルが高値であった場合、
将来の腎疾患リスクが1.5 倍に
高まるということです。米・Un
iversity of California, San
FranciscoのChi-yuan Hsu 氏ら
がJAMA Intern Med(2020年1月
27日オンライン版)に報告しま
した。AKI は全ての年齢で発症
する可能性があり、原因はさま
ざまで症状は複雑です。1年間
に米国では20万人超、世界では
1,330 万人が罹患しています。
AKI 患者さんは回復しても、再
発、腎臓病の進行、腎不全、心
臓病のリスクがあり、死亡率も
高いとされています。患者さん
の約20%が発症後3〜5年以内に
慢性腎臓病(CKD )を発症しま
す。

 以前の研究から、AKI は米国
における入院医療費の54億~24
0 億ドルの増加に関連している
ことが示されています。最も医
療費が高額なのは透析を要する
患者さんで、入院当たりの費用
は、AKI 非罹患者より1万1,016
〜4万2,077ドル高いという結果
がでました。またAKI 患者さん
は他の患者さんよりも入院期間
が3.2 日長く、その費用は、心
筋梗塞や胃腸出血よりも高く、
脳卒中、膵炎、肺炎に匹敵する
ということです。

 蛋白尿、または尿中の過剰な
蛋白質は、早期腎疾患のシグナ
ルとなりうる腎機能の重要な指
標です。ただし、頻用され安価
で非侵襲的な検査であるにもか
かわらず、一般的にAKI 患者さ
んでは測定されません。今回の
研究では、AKI 発症後の蛋白尿
と将来の腎機能低下のリスクと
の関連を評価することを目的に、
多施設共同前向きコホート内症
例対照研究を実施しました。入
院中にAKI を発症した患者さん
769例(AKI群)と背景をマッチ
させたAKI 非発症の対照群769
例を登録しました。全1,538 例
の背景は平均年齢65歳、女性54
7 例、推算糸球体濾過量(eGFR)
中央値68mL/分/1.73m2、ACR 中
央値15mg/gだった。対象は2009
年12月~15年2月の間、退院3カ
月後にACRが測定され、2018年1
1月まで半年に1回の電話連絡と
年1回の直接訪問が実施されま
した。

 中央値で4.7 年の追跡期間中、
全体で138例(9.0%)に腎疾患
の進行が認められ、うち58例は
末期の腎疾患でした。また、AK
I 群の97例(12.6%)で腎疾患
の進行が見られました。AKI 発
症後、退院3カ月後のACRレベル
が倍増するごとに腎疾患の進行
リスクは1.5 倍に高まった〔ハ
ザード比(HR)1.53、95%CI 1.
45~1.62〕。AKI 発症後のACR
高値は将来の腎疾患進行の強力
な予測因子であることが分かり
ました(C統計量0.82)。

 Hsu 氏は「腎疾患リスクの高
い患者を特定するために、AKI
後のACR をもっと重視すべきで
ある。この簡単な検査は血清ク
レアチニン測定だけでは分から
ない、予後に関する重要な情報
を教えてくれる。特定された高
リスク患者を治療の対象とする
ことで、将来の透析導入や腎移
植リスクを減らし、患者を救う
だけでなく、米国の医療費を数
十億ドル節約できる可能性があ
る」と述べています。

慢性腎臓病について解説してい

る動画です。

 

 

 

 



 火傷では獣脂の使用を重視す
る。           笑













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2】 下肢末梢動脈疾患ココア摂取群で,歩行距離が延長











 米・Northwestern Universit
y Feinberg School of Medicin
eのMary M. McDermottらは、下
肢末梢動脈疾患(PAD )患者さ
んにココアを6カ月間摂取させ
る二重盲検ランダム化比較試験
(RCT )を実施しました。その
結果、ココア摂取群では歩行距
離が最大348.6m有意に延長する
ことが分かりました。詳細はCi
rc Res(2020年2月14日オンラ
イン版)に報告されました。

 PAD を有さない者に比べPAD
患者さんは、6分間歩行テスト
における歩行距離が短いことが
知られています。また、適切な
治療介入が行われていないPAD
患者さんでは、経時的に歩行能
が低下するとの報告もあります。

 ココアの原料のカカオ豆に含
まれるカカオポリフェノール(
カカオフラバノール)の主な成
分であるエピカテキンは、PAD
患者さんの歩行能を改善する可
能性があります。これまでPAD
を有さないヒトで行われた予備
的研究では、ココア摂取により
四肢の血液灌流量が増加し、骨
格筋内のミトコンドリア活性お
よび筋肉再生が改善することが
示唆されています。

 PAD 患者さん20例における単
一盲検クロスオーバーパイロッ
ト研究では、ダークチョコレー
ト40g(カカオ含有量85%以上)
摂取から2時間後に行った歩行
テストでは、最大歩行距離が平
均11%(約12m)延長しました(
J Am Heart Assoc 2014;3. pii
: e001072、 関連記事「ダーク
チョコレートでPAD 患者の歩行
機能が改善」)。一方、ミルク
チョコレート(カカオ含有量35
%未満)の摂取後にこれらの改
善は得られませんでした。

 しかし、ココアの長期摂取が
PAD 患者さんの歩行能に及ぼす
影響については明らかではあり
ませんでした。 今回の対象は、
米シカゴ州在住で60歳以上のPA
D 患者さん44例〔平均年齢72歳、
男性66%、足関節/上腕血圧比
(ABI)0.66、BMI 29、喫煙者3
2%、6分間歩行距離334m〕。コ
コア15g とエピカテキン75mgを
含有するココアを摂取するココ
ア群と、いずれも含まないが見
かけおよび味はココアに似た飲
料を摂取するプラセボ群にラン
ダムに割り付け、6カ月間摂取
してもらいました。

 主要評価項目は、最終摂取の
2.5 時間後と24時間後に測定し
た6分間歩行距離としました。
なお有意水準はP<0.10とし、B
MI、人種、喫煙などの交絡因子
を調整しました。Intention-to
-treat(ITT )解析の結果、最
終摂取から2.5時間後の6分間歩
行距離は、プラセボ群に比べコ
コア群で42.6m (90%CI 22.2m
~∞m、P<0.005 )の有意な延
長が認められました。一方、最
終摂取から24時間後の歩行距離
は、ココア群で18.0m(同-1.7
m~+∞m、P=0.12 )延長して
いたものの、プラセボ群との間
に有意ではありませんでした。

 しかし、欠落データを補完し
て解析を行ったところ、最終摂
取から24時間後の歩行距離は、
プラセボ群に比べココア群で21
.5m の有意な延長が認められま
した(90%CI 1.5m~∞m、P=0
.084)。

 McDermott 氏らは「今回の結
果は、比較的安価で安全かつ、
日常的に入手しやすいココアの
摂取がPAD 患者の下肢の血流や
筋肉を改善し、歩行能を大幅に
向上させる可能性を示唆するも
のだ」と話しています。

ココアの健康効果について解説

している動画です。

 

 

 

 



 行楽に行く際の、条件の交絡
因子を考える。      笑















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編集後記


 尿中の過剰な蛋白質を測定す
る簡易な検査で、急性腎障害(
AKI )による入院後の進行性腎
疾患高リスク患者さんを高精度
に特定できることが示されたの
は、素晴らしい業績です。慢性
腎臓病の評価は、非常に難しく
調子が良いと思っていた人が、
急激に腎機能が悪化したり、そ
の逆で、腎機能が悪化している
ものの、病気の進行が、比較的
ゆっくりしていたりとなかなか
リスク評価が困難を極めること
が多い中、急性腎障害の場合は、
高精度で特定できるというのは、
夢のようです。
 ココアの摂取は、末梢循環の
障害を改善します。しかも生姜
の摂取より、持続時間が長い事
が知られています。ただし、コ
コアには、カフェインが含まれ
ているので、多量の摂取は不整
脈などの副作用が出る可能性が
あり、注意が必要です。ココア
の摂取の仕方も、ミルクや砂糖
を加えるのは、得策ではありま
せん。それは、ダークチョコレ
ートとミルクチョコレートの比
較でも分かることですが、ポリ
フェノールの量と関係している
ようです。

 中尉が下士官に注意する。笑














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