診療マル秘裏話  号外Vol.1806 令和2年5月19日作成

作者 医療法人社団 永徳会 藤田 亨




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目次
 
1)悪性中皮腫の近赤外光線免疫療法の開発に成功
2)アミロイドβ(Aβ)産生に関わる,新規分子を同定















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 医療界のトピックスを紹介するこのメールマガジンは
1週間に1回の割合で発行しています。もっと回数を増や
して欲しいという要望もあるのですが、私の能力のなさ
から1週間に1回が限度となっています。これからも当た
り前の医療をしながら、なおかつ貪欲に、新しい知識を
吸収し読者の皆様に提供してゆきたいと思っております。
不撓不屈の精神で取り組む所存ですのでどうかお許し下
さい。

 









 
1】 悪性中皮腫の近赤外光線免疫療法の開発に成功












 東北大学は4月24日、前臨床
研究として、ポドプラニンを分
子標的とする悪性中皮腫に対す
る近赤外光線免疫療法の開発に
成功したと発表しました。この
研究は、名古屋大学大学院医学
系研究科呼吸器内科学博士課程
4年(現、一宮市立一宮市民病
院呼吸器内科)の西永侑子大学
院生(筆頭著者)、同大高等研
究院・最先端イメージング分析
センター/医工連携ユニット(
若手新分野創成研究ユニット)・
医学系研究科呼吸器内科学の佐
藤和秀S-YLC特 任助教(責任著
者、筆頭著者)、同大未来社会
創造機構・最先端イメージング
分析センター/医工連携ユニッ
ト(若手新分野創成研究ユニッ
ト)の湯川博特任准教授、同大
医学系研究科呼吸器外科学の芳
川豊史教授、同大大学院工学研
究科の馬場嘉信教授、国立病院
機構名古屋医療センターの長谷
川好規院長ら、米国がんセンタ
ー(NCI/NIH) 分子治療診断部
門の小林久隆主任研究員、東北
大学未来科学技術共同研究セン
ター/東北大学大学院 医学系研
究科抗体創薬研究分野の加藤幸
成教授らの研究グループによる
ものです。研究成果は、科学誌
「Cells 」電子版に掲載されて
います。悪性中皮腫は、中皮細
胞から発生する悪性腫瘍です。
年間死亡数は増加傾向にあり、
今後さらに増加することが予想
されています。また、肺がんに
比べてまれで、予後不良であり、
5年生存率は治療に関わらず10
%程度です。 手術適応外では、
さらに不良とされています。切
除不能例に対する治療選択肢は
乏しく、これまでにさまざまな
薬剤の臨床試験が行われてきま
したが、有効性は証明されてい
ません。そのため、新たな治療
法の開発が望まれています。

ポドプラニンは、従来から悪性
中皮腫の特異的な診断標的とし
て用いられてきました。東北大
学の加藤幸成教授らの研究グル
ープが、世界に先駆けてポドプ
ラニンに対する抗体を開発し、
ポドプラニン抗体を治療に応用
する技術開発を進めています。

近赤外光線免疫療法(NIR-PIT)
は、アメリカ国立がんセンター・
衛生研究所(National Cancer
Institute, National Institut
es of Health)の小林久隆博士
らが報告したがん治療法です。
がん細胞が発現する蛋白質を特
異的に認識する抗体と光感受物
質IR700 の複合体を合成し、そ
の複合体が細胞表面の標的蛋白
質に結合している状態で690nm
付近の近赤外光を照射すると細
胞を破壊する仕組みです。最近、
名大の佐藤和秀S-YLC 特任助教
らのグループにより、その新し
い細胞死の仕組みの一端が解明
され、新規がん治療方法として
注目が集まっています。今回、
研究グループは、NIR-PIT とポ
ドプラニン抗体を、悪性中皮腫
の治療に応用することを試みま
した。まず、名古屋大学医学部
附属病院で手術を受けた日本人
患者さんのうち、研究目的での
使用に同意した患者さんの手術
検体を用いて、腫瘍組織に新規
の抗ポドプラニン抗体NZ-1によ
るポドプラニンの免疫染色を実
施しました。悪性中皮腫の組織
型別に分類した結果、上皮型に
おけるポドプラニン陽性率が86
.7%、二相型(上皮型と肉腫型
が混在)におけるポドプラニン
陽性率が66.7%であり、全体で
83.3%の患者さんにポドプラニ
ンの発現が見られました。白人
と日本人の悪性胸膜中皮腫の細
胞におけるポドプラニンの発現
を比較したところ、どちらの人
種の細胞でも同様にポドプラニ
ンの発現を認め、人種を超えて
広く悪性胸膜中皮腫に発現して
いることが示唆されました。

次に、NZ-1と水溶性光感受物質
IRDye 700DX(IR700)の複合体
を合成し、NZ-1-IR700を作製。
NZ-1-IR700を用いて、ヒト悪性
胸膜中皮腫がん細胞に対するNI
R-PIT を実施しました。顕微鏡
で観察した結果、近赤外光の照
射後、速やかに細胞の膨張、破
裂、細胞死が見られました。標
的細胞(ポドプラニン陽性ヒト
がん細胞)と非標的細胞(ポド
プラニン陰性ヒトがん細胞)を
共培養し、同時に近赤外光を照
射した所、標的細胞のみに細胞
死が起こり、非標的細胞には特
に影響がなかったということで
す。マウスのがんモデルにおい
て、経静脈的に薬剤を投与して
も腫瘍部位に十分に薬剤が到達
することが確認できました。ま
た、マウスのがんモデルにおい
て治療の結果、明らかな腫瘍の
増大抑制が確認でき、マウス胸
膜播種悪性中皮腫モデルにおい
ても顕著な腫瘍縮小効果が得ら
れたという。今回、ポドプラニ
ンを標的とする悪性中皮腫に対
するNIR-PIT の効果を、細胞実
験と動物実験で確認しました。
また、ポドプラニンが白人と日
本人の中皮腫がん細胞に人種を
超えて、広く発現していること
も確認できました。今回の研究
成果は、NIR-PIT を人の悪性中
皮腫治療へ応用する際、基礎的
知見として貢献することが期待
されます。

また、今回の研究では、NZ-1に
よって免疫染色による組織診断
から、NIR-PIT による治療まで、
同一の抗体によって行えること
が証明され、診断から、悪性中
皮腫のポドプラニンの発現確認
と、それに引き続く治療へとの
流れが創設されました。 最近、
さらに選択的にがん細胞のポド
プラニンを認識することができ
るcancer-specific monoclonal
antibody(CasMab) 技術を用
いた新世代の抗体が、東北大学
の加藤幸成教授らにより開発さ
れています。現在、CasMabをNI
R-PIT に応用することで、さら
に選択性の高い治療を目指して
いるということです。今後、胸
部腫瘍に対する新しい近赤外光
の照射デバイスの開発や従来の
治療との併用など、さらなる応
用が検討される、と研究グルー
プは述べています。

光免疫療法について解説してい

る動画です。英語が苦手の方は

自動翻訳で日本語字幕でご覧下

さい。

 

 

 

 



 拳闘の試合で健闘することを
検討する。        笑















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2】 アミロイドβ(Aβ)産生に関わる,新規分子を同定













 日本医療研究開発機構(AMED)
は4月20日、東京大学を中心と
する研究グループが、アミロイ
ドβ(Aβ) 産生に関わる新規
分子として「calcium and inte
grin-binding protein 1」(CI
B1) を同定し、そのAβ産生制
御メカニズムを明らかにすると
ともに、初期アルツハイマー(
AD)患者さんの死後脳において、
CIB1発現量が低下していること
を見出したと発表しました。こ
れは、東京大学大学院薬学系研
究科の富田泰輔教授、堀由起子
講師、邱詠玟大学院生らと、新
潟大学脳研究所の池内健教授ら
によるものです。 研究成果は、
「The FASEB Journal 」に掲載
されています。ADに特徴的で最
初期に見られる病理学的所見と
して、Aβ の脳内での凝集・蓄
積が挙げられます。これまでの
多くの遺伝学的研究から、この
Aβ の凝集・蓄積が神経細胞内
にタウの凝集・蓄積を引き起こ
し、神経変性に至ることが示唆
されています。 そのため、Aβ
産生機構の詳細な理解は、AD発
症の最初期過程の解明につなが
ると考えられています。Aβ は、
アミロイド前駆体蛋白質(APP)
がβセクレターゼとγセクレタ
ーゼによって2段階の切断を受
けることで産生されます。この
うちγセクレターゼによる切断
は、その切断部位によって,Aβ
のC 末端に多様性をもたらし、
ADの発症に関わる凝集性の高い
Aβ 分子種の産生に関与するこ
とから、γセクレターゼの活性
制御はADの治療標的として重要
と考えられています。 しかし、
その切断制御機構には未だ不明
な点が多くあります。研究グル
ープは、Aβ 産生に関わる新規
分子の同定のため、近年開発さ
れたゲノム編集技術であるCRIS
PR/Cas9 システムを用いて、ゲ
ノムワイドスクリーニングを実
施しました。その結果、Aβ 産
生を負に制御する新規分子とし
て「CIB1」の同定に成功しまし
た。CIB1をノックダウンやノッ
クアウトして蛋白質量を減少さ
せると、Aβ 産生量は上昇する
ことが確認されました。

免疫共沈降実験により、そのメ
カニズムとして、CIB1がγセク
レターゼと相互作用しているこ
とが分かりました。また、CIB1
はγセクレターゼの総量には影
響を与えない一方で、γセクレ
ターゼの細胞表面膜の存在量に
影響することも分かりました。
このことから、CIB1は、生理的
条件下では、γセクレターゼと
相互作用し、γセクレターゼを
細胞膜に留めていることが示唆
されました。一方、CIB1発現量
減少下においては、この機能が
失われ、γセクレターゼの内在
化が亢進することが考えられま
す。これまでの研究から、γセ
クレターゼの細胞内局在がその
切断活性に影響を与えることが
分かっています。すなわちCIB1
がγセクレターゼの細胞内局在
を変化させることで、Aβ 産生
を制御していることが示唆され
ました。

次に、AD発症プロセスにおける
CIB1の役割を検討する目的で、
ヒトAD患者さんの死後脳サンプ
ルについてシングルセルRNA-se
q 法による解析を行いました。
その結果、初期ADステージの神
経細胞においてCIB1の発現量が
減少していることが確認されま
した。これらの結果は、神経細
胞におけるCIB1発現量の減少に
より、Aβ 産生量が上昇し、AD
発症プロセスを加速する可能性
を示唆しています。

AD発症早期ステージにおいては、
CIB1の発現変動によりγセクレ
ターゼの細胞内局在が変容し、
Aβ 産生が上昇することで、AD
発症過程を加速することが示唆
されました。「今後、このCIB1
を標的とした新たなAD治療・予
防戦略の提示、早期診断法の開
発につながることが期待される」
と、研究グループは述べていま
す。

アルツハイマー病について解説

している動画です。

 

 

 



 最近の細菌が仮足を加速させ
る。           笑















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編集後記



 東北大学が4月24日、前臨床
研究として、ポドプラニンを分
子標的とする悪性中皮腫に対す
る近赤外光線免疫療法の開発に
成功したと発表したのは素晴ら
しい業績です。ただし、近赤外
光線免疫療法は、致命的な欠陥
があります。それは、腫瘍壊死
症候群の一つで、正常組織が、
腫瘍に置き換わっている所で、
光線免疫療法の治療によって、
腫瘍が消滅すると穴があいてし
まうというものです。実際に、
頭頚部の腫瘍で、頸動脈に浸潤
していた腫瘍が、この近赤外線
光免疫療法の治療で、消失して
しまい、穴があいて出血したと
いう症例があるようです。悪性
中皮腫の場合、肺胞や細気管支
に腫瘍が置き換わっている場合
に、この治療で穴があくと気胸
を起こす可能性が高くなります。
短時間に腫瘍を消滅させる力が
強ければ強いほど、穴が開きや
すくなるのは、何とも皮肉なこ
とです。
 日本医療研究開発機構(AMED)
が4月20日、東京大学を中心と
する研究グループが、アミロイ
ドβ(Aβ) 産生に関わる新規
分子として「calcium and inte
grin-binding protein 1」(CI
B1) を同定し、そのAβ産生制
御メカニズムを明らかにすると
ともに、初期アルツハイマー(
AD)患者さんの死後脳において、
CIB1発現量が低下していること
を見出したと発表したのは偉大
な業績です。AD患者さんのCIB1
の発現量を増やすことができる
薬剤が見つかれば、それによっ
てアミロイドβの産生が低下し
治療効果が出る可能性が出てき
た訳です。今後、このCIB1を標
的とした新たなAD治療・予防戦
略の提示、早期診断法の開発に
是非つなげて頂きたいものです。
現在の所、ADについては、根本
的治療が確立されていません。
今後の研究に一縷の望みを託し
たいと考えています。

 酸性溶液を産生することに、
賛成する。        笑















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