診療マル秘裏話  号外Vol.1863 令和2年7月25日作成

作者 医療法人社団 永徳会 藤田 亨




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目次
 
1)腸管GVHDは大腸杯細胞の粘液層のバリア機能破綻
2)変形性膝関節症ペプチド医薬候補のP2臨床試験















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 医療界のトピックスを紹介するこのメールマガジンは
1週間に1回の割合で発行しています。もっと回数を増や
して欲しいという要望もあるのですが、私の能力のなさ
から1週間に1回が限度となっています。これからも当た
り前の医療をしながら、なおかつ貪欲に、新しい知識を
吸収し読者の皆様に提供してゆきたいと思っております。
不撓不屈の精神で取り組む所存ですのでどうかお許し下
さい。

 









 
1】 腸管GVHDは大腸杯細胞の粘液層のバリア機能破綻













 北海道大学は7月2日、白血病
などの血液悪性腫瘍の治療に用
いられる同種造血幹細胞移植の
合併症である腸管GVHD(移植片
対宿主病)において、大腸杯細
胞の障害が生じ、大腸杯細胞に
よって形成される粘液層のバリ
ア機能が破綻することを、マウ
スモデルを利用して発見したと
発表しました。この研究は、同
大大学院医学研究院の豊嶋崇徳
教授、橋本大吾准教授らの研究
グループによるものです。研究
成果は、「Science Translatio
nal Medicine」に掲載されてい
ます。同種造血幹細胞移植は白
血病などの血液悪性腫瘍の根治
的治療ですが、感染症やGVHDは
その代表的合併症であり、時に
致死的となります。近年、腸内
細菌の乱れがGVHDや移植予後と
関連することがさまざまなグル
ープから報告されています。移
植後に腸内細菌叢が乱れると有
益な共生菌が減少し、有害な病
原体の増殖が見られます。この
ような状況において、大腸杯細
胞は糖蛋白質の一種であるムチ
ンを分泌して粘液層を構成し、
生体を防御する最後の砦として
います。特に、腸内細菌の多く
が存在する大腸では、粘液層は
2層構造をとり、緻密な内層は
腸内細菌に対する物理的バリア
になるとともに、抗菌物質を内
包することで、化学的バリアと
しても機能しています。

以前から腸管GVHDで杯細胞が減
少することが知られていました
が、その意義については不明で
した。そこで研究グループは、
マウスモデルとヒト臨床検体を
用いて、大腸に特異的な抗菌物
質である「Lypd8 」に注目し、
杯細胞が形成する粘液層による
腸管バリア機構が腸管GVHD病態
生理に及ぼす影響について検討
を行いました。まず、マウスに
骨髄移植を行い、同種移植後の
大腸杯細胞数の変化、粘液層の
形状変化、腸上皮への細菌の侵
入について検討しました。続い
て、杯細胞増殖因子であるIL-2
5 を骨髄移植前のマウスに投与
して、杯細胞を保護した場合の
GVHDに及ぼす影響について検討
しました。さらに、抗菌物質で
あるLypd8 を欠損するノックア
ウトマウスにおいても同様の検
討を行い、粘液層と抗菌物質と
の相互作用がGVHDに及ぼす影響
について検討を行いました。最
後に、北海道大学病院で行った
同種造血幹細胞移植を受けた患
者さんから得られた大腸の生検
検体を用いて、杯細胞の多寡と
GVHDの有無や臨床経過との関係
性について検討しました。

その結果、腸管GVHDでは大腸杯
細胞が大きく減少していました。
大腸杯細胞が傷害されることで、
正常な粘液の2層構造は破綻し、
腸上皮下への細菌浸潤が生じて、
GVHDをさらに悪化させることが
明らかになりました。一方、IL
-25 を投与して杯細胞を保護す
ることで、腸管GVHDが軽減され
ることも判明しました。Lypd8
は杯細胞とは異なる腸上皮細胞
から分泌される大腸特異的な抗
菌物質で、細菌の運動性を阻害
して細菌の生体内への侵入を防
ぎます。腸管GVHDではLypd8 の
産生自体は正常でしたが、粘液
層の破綻によってLypd8 を高濃
度に保持することが困難になる
ことが分かりました。IL-25 を
用いた杯細胞保護によるGVHD軽
減効果は、Lypd8 ノックアウト
マウスでは認められなかったこ
とから、杯細胞が形成する大腸
粘液層はLypd8 と協働して、腸
内細菌の侵入を防ぎ、GVHDの重
症化を抑制していることが分か
りました。同種造血幹細胞の移
植後には、さまざまな腸管合併
症をきたしますが、患者検体を
用いた検討では腸管GVHDで特異
的に大腸杯細胞が減少していま
した。また、その減少度は腸管
GVHDの重症度に比例し、治療に
よるGVHDの改善に伴って、杯細
胞も回復していました。さらに、
杯細胞の傷害度は移植予後と相
関し、重度の傷害を受けた群で
はより死亡率が高いことが分か
りました。

今回の研究で、大腸杯細胞や抗
菌物質Lypd8 のGVHD病態形成に
おける意義が解明されたことで、
これらが新たなGVHD予防・治療
のターゲットとなり得ることが
分かりました。研究グループは、
「臨床においては、大腸杯細胞
が腸管GVHDの診断・治療モニタ
ー・予後予測の新たなバイオマ
ーカーとなることが期待される」
と、述べています。

GVHDの予防と治療について解説

している動画です。

 

 

 

 



 異議を唱える意義を考える。













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2】 変形性膝関節症ペプチド医薬候補のP2臨床試験












 大阪大学発ベンチャーのステ
ムリム(大阪府茨木市)は、ペ
プチド医薬候補「レダセムチド」
について、変形性膝関節症を対
象にした第2相(P2)医師主
導治験を行う契約を結んだと発
表しました。契約相手は導出先
の塩野義製薬と治験主体の弘前
大学です。レダセムチドでは表
皮水疱症と急性脳梗塞も第2相
まで進みました。

 弘前大学が今年中に医師主導
治験を始め、ステムリムと塩野
義製薬が治験薬の提供や資料作
成で協力します。ステムリムは
レダセムチドに関する権利をす
べて塩野義に導出しています。
脳梗塞では塩野義が、表皮水疱
症では阪大が主体となり第2相
試験が進行中です。第2相に移
行した対象疾患は変形性膝関節
症が3つめとなります。

 レダセムチドを投与すると、
組織再生にかかわる間葉系幹細
胞(MSC)の体内分泌が促さ
れるということです。もともと
希少疾患の表皮水疱症向けに開
発を始めましたが、MSCの汎
用性に着目して他疾患への応用
も狙っています。

 鷹揚として応用問題を解説す
る。           笑













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編集後記



 北海道大学が7月2日、白血病
などの血液悪性腫瘍の治療に用
いられる同種造血幹細胞移植の
合併症である腸管GVHD(移植片
対宿主病)において、大腸杯細
胞の障害が生じ、大腸杯細胞に
よって形成される粘液層のバリ
ア機能が破綻することを、マウ
スモデルを利用して発見したと
発表したのは、素晴らしい業績
です。ただ骨髄移植自体が非常
に患者さんの身体の負担が多い
治療法であり、骨髄移植を行っ
ても再発した患者さんもいらっ
しゃるので、患者さんの身体を
ボロボロにしてまで、行う治療
であるかどうか懐疑的に考える
今この頃です。
 大阪大学発ベンチャーのステ
ムリム(大阪府茨木市)が、ペ
プチド医薬候補「レダセムチド」
について、変形性膝関節症を対
象にした第2相(P2)医師主
導治験を行う契約を結んだと発
表したのは、喜ばしいことです。
レダセムチドを投与すると、組
織再生にかかわる間葉系幹細胞
(MSC)の体内分泌が促され
るというのは、本当に凄いこと
です。変形性膝関節症の他にも
脳梗塞や表皮水疱症についても
臨床試験が進行中であり、その
事実は、MSCの汎用性に着目
して他疾患への応用が確実であ
ることの証明でしょう。間葉系
幹細胞(MSC)は、移植しか
治療法がないと思われがちです
が、このような方法があるとは、
驚天動地です。

 異色の移植法を考える。笑















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