診療マル秘裏話  号外Vol.1905 令和2年9月12日作成

作者 医療法人社団 永徳会 藤田 亨




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目次
 
1)CAR-T療法基礎研究商用化,地方大学起点に拡大
2)便秘薬の腸管バリア機能修復が,NAFLD治療に有効
















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 医療界のトピックスを紹介するこのメールマガジンは
1週間に1回の割合で発行しています。もっと回数を増や
して欲しいという要望もあるのですが、私の能力のなさ
から1週間に1回が限度となっています。これからも当た
り前の医療をしながら、なおかつ貪欲に、新しい知識を
吸収し読者の皆様に提供してゆきたいと思っております。
不撓不屈の精神で取り組む所存ですのでどうかお許し下
さい。

 









 
1】 CAR-T療法基礎研究商用化,地方大学起点に拡大












 CAR-T療法の基礎研究を
商用化しようとする動きが地方
大学を起点に広がりつつありま
す。山口大学発スタートアップ
のノイルイミューン・バイオテ
ック(東京都港区)は、固形ガ
ンを狙う独自技術で外部提携を
重ね、マザーズ上場への地なら
しを進めています。また、今夏
には信州大学と愛媛大学がそれ
ぞれ新会社を立ちあげました。
米ペンシルバニア大学から世界
初のCAR-T薬「キムリア」
(スイス・ノバルティス)が生
まれたように、この分野におけ
るアカデミアの力は侮れません。

 CAR-T療法は、CAR(
キメラ抗原受容体)を組み合わ
せて強化したT細胞でガン細胞
を攻撃します。だがキムリアを
含め、ほとんどの開発品は血液
ガンが対象となっています。ガ
ン細胞が血液中をただよう血液
ガンと違い、固形ガン細胞は固
まって存在するため攻撃しにく
いとされています。専門家の間
ですら「CAR-Tは血液ガン
が限界」という声も上がる中、
鬼門の固形ガンに果敢に挑むの
が山口大の玉田耕治教授です。
2015年にノイルイミューンを設
立し、サイトカインとの相乗効
果で固形ガンにも効く「プライ
ムCAR-T技術」の実用を目
指しています。

 そのノイルイミューンの動き
が1年ほど前から活発化してい
ます。海外勢では米アダプティ
ミューン、英オートルス、米レ
ジェンドバイオテック、国内勢
では澁谷工業、大阪大学発スタ
ートアップのC4U、中外製薬
などと次々と提携を結びました。

 共同研究など内容が明確な契
約もあれば、中外との契約は「
技術評価に関する提携」との表
現にとどまり詳細は不明です。
いずれにせよ「大半は先方から
声がかかる」(石崎秀信社長)
との言葉通り、関心を示す企業
が増えてきたのは確かでしょう。

 信州大が立ち上げたA-SE
EDS(東京都中央区)は、基
本的に血液ガンを対象としつつ、
早く作れて安価なCAR-T薬
に取り組んでいます。CAR遺
伝子の導入に酵素を使うトラン
スポゾン法がコア技術で、従来
のウイルス法より量産に向いて
います。

 「動く遺伝子」の別名を持つ
トランスポゾンは半世紀以上前
に見つかりましたが、CAR-
Tへの応用は困難を極めました。
信州大の中沢洋三教授は、CA
R-T研究の中心地の一つ米ベ
イラー大で修行を積み、導入効
率などの課題を解消しました。
「作成が容易なうえ、治療効果
も従来法にひけをとらない」と
胸を張っています。

 血液ガン治療におけるキムリ
アの画期性は疑いようがありま
せんがが、患者さん自身のT細
胞にウイルスで一つひとつCA
R遺伝子を導入しているのが現
状です。日本で3000万円超
という破格の薬価がついた主因
も、ひとえにこうした「職人技」
から脱却できない点にあります。

 愛媛大発のオプティアム・バ
イオテクノロジーズ(愛媛県東
温市)はCAR-T細胞のCA
R部分に着目しました。CAR
の基になる一本鎖抗体(scF
v)の構成要素である重鎖と軽
鎖を別個にライブラリー化しま
した。無数の組み合わせを試す
ことで最適なscFvが作れま
す。

 この技術を使えば、CAR-
T療法においてトレードオフと
されるガン探索機能と攻撃能力
持続の両立が期待できます。ま
た理論的には固形ガンも対象に
なり得ます。抗体作成技術なの
で、CAR-T薬でない抗体医
薬にも応用可能ということです。

 対象疾患が限定的、作成方法
が非効率など、CAR-T療法
はいまだ発展途上にあります。
キムリアを追う「イエスカルタ」
(米ギリアド・サイエンシズ)、
「liso-cel」(米ブリ
ストルマイヤーズスクイブ)も
その点は同様です。

 キムリアの母体であるペンシ
ルバニア大は、CAR-T研究
ではベイラー大や米国立ガン研
究所(NCI)に比べてむしろ
遅れをとっていました。当時を
知る専門家は「ペンシルバニア
大が先陣を切れたのは、標的抗
原や作成方法の組み合わせが幸
運にもマッチした結果ともいえ
る」と明かしています。日本で
も、地方大学のシーズが大化け
する可能性は十分にあります。

CAR-T細胞について解説してい

る動画です。

 

 

 



 先人が戦陣を強固なものにし
てくれたおかげで、先陣が切れ
た。           笑













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2】 便秘薬の腸管バリア機能修復が,NAFLD治療に有効













 横浜市立大学は8月20日、便
秘症治療薬ルビプロストン(商
品名:アミティーザカプセル)
による腸管バリア機能の修復が、
非アルコール性脂肪肝疾患(No
nalcoholic fatty liver disea
se: NAFLD )の治療に有効であ
ることを示したと発表しました。
これは、同大医学部肝胆膵消化
器病学教室の結束貴臣助教、中
島淳主任教授らの研究グループ
によるものです。研究成果は「
Lancet Gastroenterology & He
patology」にオンライン掲載さ
れています。
飲酒習慣のない脂肪肝NAFLD の
日本における患者数は約2000万
人とされていますが、肥満社会
に伴いその罹患率は増加してい
ます。その約10~20%は進行型
の非アルコール性脂肪肝炎(No
nalcoholic steatohepatitis:
NASH)であり、これが原因で肝
硬変や肝臓ガンを発症すると、
肝移植が必要となります。しか
し、NAFLD に対する薬物治療
は未だ確立されたものはなく、
肝臓内の脂肪や炎症、線維化を
ターゲットとした薬剤の開発が
進んでいます。

一方、NAFLD 進行のメカニズム
として、腸内細菌が産生するエ
ンドトキシン(毒素)の関与が
報告されています。腸管壁のバ
リア機能が正常な状態ではエン
ドトキシンは腸管内に留まるが、
NAFLD 患者さんの場合、このバ
リア機能が破綻している(リー
キーガット:Leaky gut)ため、
エンドトキシンが血液中に流出
し、NAFLD の増悪に関与すると
されています。

便秘症治療薬の1つであるルビ
プロストンは、腸管バリア機能
の改善効果が報告されています
が、非便秘患者さんに対するル
ビプロストンの投与はこれまで
に報告がありません。研究グル
ープは今回、安全性を考慮して、
便秘症を合併するNAFLD 患者さ
んを対象とし、ルビプロストン
投与による腸管バリア機能の改
善効果が有効であるかを検討し
ました。研究では、便秘症を有
するNAFLD 患者さん150人を、1
日1回12週間、24μgまたは12μ
g のルビプロストンを内服する
群とプラセボを内服する群の3
群に分け、ランダム化、二重盲
検、プラセボコントロール第2
相試験を行いました。有効性の
評価は、血液中の肝機能マーカ
ーやエンドトキシンを測定する
とともに、MRエラストグラフィ
ーを用いて肝臓中の脂肪量・硬
さを測定しました。腸管バリア
機能はラクツロースマンニトー
ルテストを行い、尿サンプルか
ら測定しました。

その結果、有効性評価では、ル
ビプロストン投与群において、
プラセボ群と比較して肝機能マ
ーカーやエンドトキシン、肝臓
中の脂肪量・硬さ、腸管バリア
機能が著明な改善を示しました。
特に、ルビプロストン投与群の
中でも腸管バリア機能が改善し
たグループにおいては、肝機能
マーカーや肝臓中の脂肪量・硬
さ、NAFLD の増悪に関与する血
液中のエンドトキシンの影響が
明らかに減少しました。一方で、
ルビプロストン投与による腸内
細菌叢の変化は認められなかっ
たため、エンドトキシンの改善
は腸内細菌の変化によるもので
はなく、腸管バリア機能の修復
が関連していることの裏付けと
なったということです。

安全性評価では、試験全体で17
%の患者さんに有害事象を認め
ました。一番多い有害事象は下
痢(14%)でしたが、生活に支
障をきたすような重篤なものは
認められませんでした。ルビプ
ロストン12μg/日投与群は、24
μg/日投与群より有害事象が少
なく、同等の有効性を示しまし
た。これらの結果は、ルビプロ
ストンによる腸管透過性の改善
効果が、NAFLD 患者さんにおけ
る肝機能改善に有効であること
を示しています。NAFLD では、
腸管バリアの破綻が起きている
ことが報告されているため、今
後、便秘症を持たないNAFLD 患
者さんにおいて、ルビプロスト
ンの有効性と安全性を検討する
必要があります。

研究グループは「本研究の結果
を受け、肝臓の脂肪、炎症、線
維化といった、現在開発が進ん
でいるNAFLD 治療のターゲット
に腸管バリア機能の是正が新た
な選択肢の1つとして加わる可
能性がある。本研究ではルビプ
ロストンの服用期間は12週間と
短いため、今後はもう少し内服
期間の長い研究が必要だ」と、
述べています。

ルビプロストンについて解説し

ている動画です。

 

 

 

 



 気管が狭まっている期間が長
い。           笑














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編集後記




 CAR-T療法の基礎研究を
商用化しようとする動きが地方
大学を起点に広がりつつあるの
は、喜ばしいことです。しかも、
キムリアのような先行品の欠点
を補うように研究を進めている
のが、素晴らしいと感じました。
例えば、サイトカインとの相乗
効果で固形ガンにも効く「プラ
イムCAR-T技術」の実用を
目指すとか、基本的に血液ガン
を対象としつつ、早く作れて安
価なCAR-T薬に取り組んで
いるとかの涙ぐましい努力の跡
が見て取れます。CAR遺伝子
の導入に酵素を使うトランスポ
ゾン法がコア技術で、従来のウ
イルス法より量産に向いている
というのは、以前のメルマガで
も紹介しました。
 横浜市立大学が8月20日、便
秘症治療薬ルビプロストン(商
品名:アミティーザカプセル)
による腸管バリア機能の修復が、
非アルコール性脂肪肝疾患(No
nalcoholic fatty liver disea
se: NAFLD )の治療に有効であ
ることを示したと発表したのは、
素晴らしい業績です。NAFLD に
対する薬物治療は未だ確立され
たものはなく、肝臓内の脂肪や
炎症、線維化をターゲットとし
た薬剤の開発が進んでいるなか
で、新薬のドラッグリポジショ
ニングという新鮮な手法で発見
したことは、大いに評価すべき
だと考えます。  NAFLD では、
腸管バリアの破綻が起きている
ことが報告されているため、今
後、便秘症を持たないNAFLD 患
者さんにおいて、ルビプロスト
ンの有効性と安全性を検討する
必要があるとは言え、NAFLD の
患者さんには、一筋の光が見え
たのではないでしょうか?

 長官の腸管バリアが破綻する。















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