診療マル秘裏話  号外Vol.1962 令和2年11月17日作成

作者 医療法人社団 永徳会 藤田 亨




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目次
 
1)IL-34がICBの抵抗性獲得に寄与することを発見
2)鎖掛け布団を使うと精神疾患の人の不眠症改善













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 医療界のトピックスを紹介するこのメールマガジンは
1週間に1回の割合で発行しています。もっと回数を増や
して欲しいという要望もあるのですが、私の能力のなさ
から1週間に1回が限度となっています。これからも当た
り前の医療をしながら、なおかつ貪欲に、新しい知識を
吸収し読者の皆様に提供してゆきたいと思っております。
不撓不屈の精神で取り組む所存ですのでどうかお許し下
さい。

 









 
1】 IL-34がICBの抵抗性獲得に寄与することを発見












 北海道大学は10月21日、ガン
細胞が産生する液性生理活性因
子インターロイキン-34(IL-3
4 )が、抗PD-1抗体治療をはじ
めとした免疫チェックポイント
阻害療法(Immune checkpoint
blockade、ICB )に対する抵抗
性の獲得に寄与することを発見
したと発表しました。この研究
は、同大遺伝子病制御研究所の
清野研一郎教授、順天堂大学医
学部免疫学講座の八木田秀雄先
任准教授、かずさDNA 研究所ゲ
ノム事業推進部の長谷川嘉則チ
ーム長、DNA-Link社のイ・ヒギ
ョン博士らの研究グループによ
るものです。研究成果は、「iS
cience」にオンライン掲載され
ています。

 PD-1やCTLA-4をはじめとした
免疫チェックポイント分子は、
腫瘍微小環境における免疫細胞
を主としたさまざまな細胞の表
面に発現しており、腫瘍細胞に
対する免疫反応を負に調節しま
す。近年、それらの分子の働き
を阻害するICB がガンの新たな
治療法として確立され、外科療
法、薬物療法、放射線療法に次
ぐ第4の手法としてその適応対
象を拡大し続けています。その
一方で、ICB の治療効果はガン
の種類やガン組織を構成する微
小環境、あるいは対象患者さん
体内の免疫環境等に大きく依存
し、治療感受性を示す患者さん
は治療を受けた患者さん全体の
20~30%に留まるといわれてい
ます。そのため、ICB に対する
治療抵抗性を解除し得る方法が
日々模索されています。

 IL-34 は、2008年に初めて同
定された液性生理活性因子であ
り、正常なヒトにおけるその発
現は脳や皮膚に限定されること
が知られています。近年、さま
ざまなガン種の病巣においても
IL-34 の発現が確認され、ガン
の進行や転移に関与することが
報告されています。また、清野
教授らのグループは過去に、肺
ガン細胞由来のIL-34 が、抗ガ
ン剤を用いた治療に対する抵抗
性の獲得に寄与することを報告
しました。しかし、多くのガン
種が有するとされるICB 治療抵
抗性とIL-34 の関係性は不明な
ままでした。そこで今回、研究
グループは、ガン細胞を由来と
するIL-34とICB治療への抵抗性
の獲得に何らかの関係性がある
という仮説のもと、IL-34 標的
治療を基軸としたICB 抵抗性解
除法の確立を目的として研究を
行いました。

 研究グループは、マウスを由
来とする3種のガン細胞株(卵
巣ガン:HM-1、大腸ガン:CT26、
乳ガン:4T1)を準備し、IL-34
を恒常的に発現する株に加え、
遺伝子編集手法であるCRISPR-C
as9 システムを用いてIL-34 を
ノックアウトした株を作製しま
した。これらの細胞株を実験用
マウスの皮下に移植して腫瘍を
形成させ、ICB 治療を施した後
に腫瘍の大きさを経過観察する
ことで、ガン細胞由来IL-34 の
有無によって生じるICB 治療効
果の差を比較しました。その結
果、IL-34 を産生する腫瘍がIC
B 抵抗性を有するのに対し、そ
の発現を消失させた腫瘍はICB
治療に対し感受性を示すことが
判明しました。また、ガン細胞
由来のIL-34 を欠損したガン微
小環境において、抗腫瘍免疫の
活性化に関わるさまざまな液性
生理活性因子の遺伝子発現が上
昇していることが分かりました。

 次に、腫瘍内に浸潤する免疫
細胞を解析することで、ガン細
胞由来のIL-34 が存在する腫瘍
内の免疫環境とICB 抵抗性獲得
の関係性を調べました。結果、
ガン細胞由来IL-34 の発現阻害
が、免疫応答を活発化する炎症
性マクロファージと、ガンを攻
撃する働きを担うT細胞の腫瘍
内における割合を増加させるこ
とが判明しました。また、IL-3
4 陽性腫瘍に対し、抗IL-34 抗
体治療およびICB 治療を行う群
の腫瘍は、ICB 単剤による治療
群と比べ、縮小することが示さ
れました。

 さらに、体内の免疫系がヒト
化された実験用マウスにヒトの
ガン組織を移植したモデルを用
い、抗ヒトIL-34 抗体および抗
ヒトPD-1抗体による併用治療を
行うことで、より臨床に近い条
件でIL-34 標的治療の有用性を
検討した結果、併用療法を行っ
た3匹中2匹で、比較群よりも
腫瘍が縮小しました。

 ガン細胞由来のIL-34 の働き
を阻害することで、一部のガン
種のICB 抵抗性を解除し得るこ
とが示された今回の研究成果は、
IL-34 とICB 治療を紐づけた初
めての報告です。研究グループ
は、「今後、IL-34 を標的とし
た新規治療法が確立されると同
時に、腫瘍におけるICB 抵抗性
獲得のメカニズムの解明がより
進むことが期待される」と、述
べています。

免疫療法と免疫チェックポイン

ト阻害剤の講演動画です。

 

 

 

 



 介助の解除を要求する。 笑















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2】 鎖掛け布団を使うと精神疾患の人の不眠症改善












 金属製の鎖を入れ、重みと体
へのフィット感を高めた6-8 kg
の掛け布団を就寝時に使用する
ことで、精神疾患を有する人の
不眠症が改善したとする初のラ
ンダム化比較試験(RCT )の成
績が報告されました(J Clin S
leep Med 2020; 16: 1567-1577)。
双極性障害や注意欠如・多動性
障害(ADHD)を合併する不眠患
者さん120 人の検討で対照群に
比べ、不眠重症度指数(ISI )
の大幅な改善が認められたとい
うことです。

 「不眠症は一般市民だけでな
く、精神疾患患者の罹患率が高
いことが知られており、うつ病
や、双極性障害、ADHDなどを有
する人の最大6-8 割が不眠や不
眠に伴う認知機能低下や情動の
問題などを抱えていると報告さ
れている」と研究グループは述
べています。一部の国では以前
から、こうした精神疾患を有す
る人に対し、感覚の過敏性や生
理的な不眠に良いのではないか
との仮説に基づき作業療法の一
環として鎖入り布団が用いられ
てきたそうですが、科学的な効
果検証は行われていませんでし
た。



 今回のRCT は不眠症と診断さ
れたうつ病、双極性障害、ADHD、
全般性不安障害のいずれか、ま
たは複数の疾患を合併する120
例(平均年齢40歳)を対象に行
われました。家庭での、金属製
の鎖入りの掛け布団(8kgまた
は6kg)と、軽量のプラスチッ
ク製鎖入りの掛け布団(約1.5
kg)による不眠改善の効果を比
較検討しました。
 
 ベースラインから4週間時点
において、金属の鎖入りの掛け
布団を使用した群の60%近くで
ISIが50%減少、対照群の5.4%
減少を大きく上回る改善が確認
されました。また、寛解(ISI
スケールで7 ポイント以上の減
少)の割合も42.2%と対照群の
3.6 %を大きく上回っていたと
いうことです。

 4週目以降に、全ての対象患
者さんに実施された12カ月フォ
ローアップ試験では、4種の異
なる掛け布団(6 kgまたは8 kg
の鎖入り、もしくは6.5 kgまた
は7 kgのボールが入っている)
による検討を実施しました。好
みの掛け布団を選んでもらった
所、多くの人はより重い掛け布
団を選んだそうです。フォロー
アップ試験では、対照群からス
イッチした人らも、当初から金
属の鎖入りの掛け布団を選んだ
人らと同等の不眠改善効果が確
認されました。12カ月時点で全
ての参加者の92%に不眠の改善
が確認され、78%が寛解に至っ
ていたということです。

 研究グループの一人、Mats A
dler氏(スウェーデン・カロリ
ンスカ研究所臨床神経科学部門)
は「同試験で示された効果量の
大きさに驚いた」とコメントし
ています。同社公式サイトでは、
この製品がスウェーデン・デン
マークでは公的保険の適用を受
けていること、国内では大阪大
学歯学部附属病院障害者歯科治
療部で、歯科治療時の緊張を緩
和するために使用されているこ
となどが紹介されています。同
試験はスウェーデン・カロリン
スカ研究所の資金提供を受けて
実施されました。

眠れないのには、原因があると

いうことを解説している動画で

す。

 

 

 

 



 硬式野球の公式試合をする。
















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編集後記




 北海道大学が10月21日、ガン
細胞が産生する液性生理活性因
子インターロイキン-34(IL-3
4 )が、抗PD-1抗体治療をはじ
めとした免疫チェックポイント
阻害療法(Immune checkpoint
blockade、ICB )に対する抵抗
性の獲得に寄与することを発見
したと発表したのは偉大な業績
です。ガン細胞由来のIL-34 の
働きを阻害することで、一部の
ガン種のICB 抵抗性を解除し得
ることが示された今回の研究成
果は、IL-34 とICB 治療を紐づ
けた初めての報告ということで
すから、実際の臨床では、早く
IL-34阻害剤とICB 治療がセッ
トで行うことができるようにな
ることを期待したいと思います。
 金属製の鎖を入れ、重みと体
へのフィット感を高めた6-8 kg
の掛け布団を就寝時に使用する
ことで、精神疾患を有する人の
不眠症が改善したとする初のラ
ンダム化比較試験(RCT )の成
績が報告されたのは素晴らしい
業績です。精神疾患を有する人
の不眠症治療は、困難であり、
多くの心療内科や精神神経科で
は、ベンゾジアゼピン系をはじ
めとするマイナートランキライ
ザーの依存症に陥ってしまう患
者さんが多いことが分かってい
ます。それを寝具の工夫一本で
高い確率で解決したということ
ですから、本当に驚天動地と言
わざるを得ません。

 怪傑ゾロが事件を解決する。















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