診療マル秘裏話  号外Vol.2004 令和3年1月5日作成

作者 医療法人社団 永徳会 藤田 亨




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目次
 
1)抗ガン作用有す植物由来翻訳阻害剤の標的同定
2)ダニ媒介性脳炎は脳炎から死亡に至る可能性有













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 医療界のトピックスを紹介するこのメールマガジンは
1週間に1回の割合で発行しています。もっと回数を増や
して欲しいという要望もあるのですが、私の能力のなさ
から1週間に1回が限度となっています。これからも当た
り前の医療をしながら、なおかつ貪欲に、新しい知識を
吸収し読者の皆様に提供してゆきたいと思っております。
不撓不屈の精神で取り組む所存ですのでどうかお許し下
さい。

 









 
1】 抗ガン作用有す植物由来翻訳阻害剤の標的同定












 理化学研究所(理研)は12月
10日、抗ガン作用を持つ植物由
来の翻訳阻害剤「ロカグラミド
A」の標的蛋白質として、翻訳
開始因子「DDX3」を新たに同定
したと発表しました。この研究
は、理研開拓研究本部岩崎RNA
システム生化学研究室の岩崎信
太郎主任研究員、チェン明明国
際プログラム・アソシエイト、
七野悠一基礎科学特別研究員、
水戸麻理テクニカルスタッフ1、
斉藤大寛研修生、袖岡有機合成
化学研究室の袖岡幹子主任研究
員、闐闐孝介専任研究員、藤原
広一特別研究員(研究当時)、
生命機能科学研究センター翻訳
構造解析研究チームの伊藤拓宏
チームリーダー、髙橋真梨技師、
環境資源科学研究センター生命
分子解析ユニットの淺沼三和子
技師らの国際共同研究グループ
によるものです。研究成果は、
「Cell Chemical Biology」 オ
ンライン版に掲載されています。

 ロカグラミドAは、近年、注
目を集めている翻訳阻害剤です。
抗ガン作用を持つほかに、新型
コロナウイルス感染症(武漢熱)
の原因ウイルスである武漢熱ウ
イルスに対する抗ウイルス作用
(ウイルス増殖抑制効果)も持
つことが明らかになりつつあり
ます。

 ロカグラミドAは、アグライ
ア(Aglaia odorata、和名:樹
蘭)という植物が産生する二次
代謝産物であり、標的蛋白質で
ある翻訳開始因子「eIF4A」 に
結合することで翻訳を阻害し、
ガン細胞の増殖を抑制します。
これまで、ロカグラミドAはeI
F4A 以外の蛋白質も標的とする
ことが示唆されつつも、その詳
細は分かっていませんでした。
また、ロカグラミドAは特定の
ガン細胞に対してより効果的に
作用することが知られていまし
たが、それがどのような性質の
細胞なのかは未解明のままでし
た。

 今回、研究グループはまず、
ロカグラミドAにO-NBD (ニト
ロベンゾオキサジアゾール)と
呼ばれる特殊な反応基を結合さ
せた化合物(RocA-O-NBD)を有
機合成しました。O-NBD 基は、
近くの蛋白質のリジン残基と反
応し、蛍光性のN-NBD 基へと変
化します。この性質を利用し、
RocA-O-NBDはその分子の近くに
存在するロカグラミドAの標的
蛋白質に蛍光標識を導入するこ
とができます。また、蛍光標識
された標的蛋白質は質量分析法
により同定できます。

 実際に、RocA-O-NBDをウサギ
網状赤血球抽出液中で反応させ
た所、翻訳開始因子としてeIF4
A に加えて「DDX3」を新たに同
定しました。また、培養細胞で
DDX3をノックダウンした所、ロ
カグラミドAによる細胞増殖抑
制の効率が減少することが分か
りました。

 eIF4AやDDX3はRNA結合蛋白質
ですが、RNA 配列特異性を持っ
ていません。しかし、ロカグラ
ミドAと結合したeIF4A には、
アデニン(A)やグアニン(G)
塩基が連続した配列(ポリプリ
ン配列)に対する新しいRNA 配
列特異性が生じます。これによ
り、ポリプリン配列を持つRNA
からの翻訳が阻害されます。同
様のことがDDX3にも生じている
ことが分かりました。

 また、アグライアからRNA を
単離し、次世代シーケンサーを
用いた解析によりトランスクリ
プトームを再構築することで、
アグライアのDDX3遺伝子の塩基
配列を明らかにしました。そし
て、アグライアDDX3には特異的
な点突然変異が生じていること
が分かりました。この点突然変
異をヒトDDX3に付与するとロカ
グラミドAが作用できなくなる
ことから、アグライアは進化上、
ロカグラミドAの標的蛋白質の
遺伝子に変異を獲得することで、
ロカグラミドAが自分自身を攻
撃しないように翻訳開始因子を
変化させたことが明らかになり
ました。

 通常の翻訳阻害剤は、その標
的蛋白質の量が多いほど翻訳阻
害効果が弱まります。しかし、
ロカグラミドAはその逆で、標
的蛋白質の量が多いほどRNA に
結合するeIF4A およびDDX3が多
くなり、結果的に翻訳阻害効果
が高まることが分かりました(
ドミナントネガティブ作用)。
このことから、ロカグラミドA
が作用しやすいガン細胞では、
その標的であるeIF4A およびDD
X3が過剰発現している可能性が
考えられました。そこで、数種
のガン細胞を調べたところ、ロ
カグラミドAの作用効果はeIF4
A およびDDX3の発現量と相関す
ることが明らかになりました。

 今回の研究で、抗ガン剤とし
て現在有望視されている小分子
化合物ロカグラミドAの標的蛋
白質と作用メカニズムが明らか
になったことにより、より効果
の期待できるガン細胞を予測す
ることが可能になりました。研
究グループは、「今後は、事前
にガン細胞の性質を調べること
により、ロカグラミドAが効き
やすいかどうかを事前に診断で
きるようになると期待できる」
と、述べています。

ガンの正体について解説してい

る動画です。

 

 

 

 



 コンゴで今後のことを考える。


 翻訳とは,メッセンジャーRNA
から蛋白質を作る反応のことを
言います。この反応を阻害する
薬のことを翻訳阻害剤と言いま
す。













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2】 ダニ媒介性脳炎は脳炎から死亡に至る可能性有













 ダニ媒介性脳炎(TBE)は,野
外でマダニに咬まれウイルスに
感染して発症します。北海道内
の中枢神経系の炎症性疾患患者
さんにおいて、ダニ媒介性脳炎
ウイルス(TBEV)の直近の感染
者が3例、過去の感染者が5例
確認されたと北海道大学大学院
医学研究院名誉教授の佐々木秀
直氏らの研究グループが発表し
ました。日本国内でTBE の罹患
率が上昇しており、広範囲にTB
EVの分布が報告されていますが、
感染状況についての情報は乏し
いと言えます。今回の研究は、
TBEVの感染状況の実態解明に向
けて行われた国内初の大規模調
査となります。

 TBE は、フラビウイルス科に
属するウイルスによる感染症で、
熱帯以外のユーラシア大陸広域
で年間約1万例の患者さんが発
生しています。マダニに咬まれ
ると7~14日の潜伏期間を経て、
インフルエンザ様の発熱、嘔吐、
頭痛、関節痛や筋肉痛の症状で
始まり、重篤化すると歩行障害、
麻痺、痙攣発作、精神錯乱や意
識障害などの脳炎症状を呈し、
死亡に至ることがあります。
 
 北海道ではこれまでに5例の
患者さんが確認され(うち4例
は2016年以降に報告)、2人が
死亡しています。日本国内では
TBEVの感染状況に関する情報が
乏しく、検査・診断体制も十分
ではないため見過ごされている
患者さんがいる可能性が疑われ
ています。

 研究グループは、TBEV感染が
明らかになっていない感染者を
調べるため、2010~18年に収集
された北海道内の神経疾患患者
さん2,000 例、健康な住民246
例の血清検体を用いて、血液中
のTBEVに対する抗体を測定して
保有状況を調査しました。神経
疾患患者さんの中には、神経変
性疾患819 例、自己免疫疾患28
3 例、炎症性疾患245 例、末梢
神経障害237 例、筋肉疾患81例、
腫瘍性疾患61例、代謝性疾患54
例、血管障害43例などが含まれ
ていました。

 解析の結果、炎症性疾患患者
さん3例から直近のウイルス感
染を示唆するTBEVに特異的なIg
M 抗体および中和抗体が検出さ
れました。いずれの患者さんで
も脳や脊髄、それらを覆う髄膜
に炎症反応が認められており、
TBE であったと考えられました。
また、神経変性疾患や末梢神経
疾患など他の神経疾患と診断さ
れた4例および健常者からもTB
EVに特異的なIgG 抗体および中
和抗体が検出され、過去にTBEV
感染歴があることが確認されま
した。

 これらの結果から、日本国内
にTBEV感染が診断されていない
感染例があり、その中には脳炎
を発症した人がいること、さら
には神経疾患患者さんにおいて
TBE の未診断例が存在すること
が明らかになりました。今回の
結果を踏まえ、研究グループは
「今後、国内でのTBE の疫学的
リスクの実態を明らかにし、ワ
クチンなどの予防策を検討して
いく必要がある」と結論してい
ます。

ダニ媒介性脳炎について解説し

ている動画です。

 

 

 



 大社で、代謝性疾患の治癒を
祈願する。        笑














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編集後記




 理化学研究所(理研)が12月
10日、抗ガン作用を持つ植物由
来の翻訳阻害剤「ロカグラミド
A」の標的蛋白質として、翻訳
開始因子「DDX3」を新たに同定
したと発表したのは素晴らしい
業績です。今回の研究で、抗ガ
ン剤として現在有望視されてい
る小分子化合物ロカグラミドA
の標的蛋白質と作用メカニズム
が明らかになったことにより、
より効果の期待できるガン細胞
を予測することが可能になった
ということですので、この予測
を元に、ロカグラミドAを使用
することが効率的に治療を行う
有益な方法と言えましょう。
 ダニ媒介性脳炎(TBE)は,野
外でマダニに咬まれウイルスに
感染して発症する病気です。致
死性もあることから、マダニに
咬まれないことが一番予防で、
重要と言えましょう。ところが、
高齢者の方が、草むしりする時
に無防備であることが多いこと
は問題だと思います。ダニ媒介
性脳炎や、重症熱性血小板減少
症候群(SFTS)などの重篤な病
気を発症する可能性があると言
うことをもっと真剣に啓蒙する
必要があると思いました。脳炎
は、本当に怖い病気です。西ナ
イル脳炎や日本脳炎やセントル
イス脳炎などは、マダニではな
く蚊が媒介します。

 新券で真剣勝負する。笑













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