診療マル秘裏話  号外Vol.2245 令和3年10月14日作成

作者 医療法人社団 永徳会 藤田 亨




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目次
 
1)TTF-1陰性肺腺ガンで悪性化分子生物学的メカニズム
2)北海道でマダニ咬傷でかかるウイルス感染症を新発見














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 医療界のトピックスを紹介するこのメールマガジンは
1週間に1回の割合で発行しています。もっと回数を増や
して欲しいという要望もあるのですが、私の能力のなさ
から1週間に1回が限度となっています。これからも当た
り前の医療をしながら、なおかつ貪欲に、新しい知識を
吸収し読者の皆様に提供してゆきたいと思っております。
不撓不屈の精神で取り組む所存ですのでどうかお許し下
さい。

 









 
1】 TTF-1陰性肺腺ガンで悪性化分子生物学的メカニズム














 愛知県ガンセンターは9月16
日、肺腺ガンの予後不良なサブ
タイプであるTTF-1 陰性肺腺ガ
ンで、高悪性化をきたす分子生
物学的メカニズムを詳細に解明
したと発表しました。この研究
は、同センター分子診断トラン
スレーショナルリサーチ分野の
田口歩分野長(兼名古屋大学大
学院医学系研究科先端ガン診断
学連携教授)の研究グループと、
名古屋大学大学院医学系研究科
呼吸器内科学の田中一大病院助
教(共同筆頭著者)、長谷川好
規名誉教授、同大大学院医学系
研究科呼吸器外科学の芳川豊史
教授、米国MDアンダーソンガン
センターとの国際共同研究によ
るものです。研究成果は、「Jo
urnal of National Cancer Ins
titute」オンライン版に掲載さ
れています。

 肺ガンは、罹患者数、死亡者
数ともに増加の一途をたどって
おり、特に死亡者数は7万5,000
人を超えて全ガン種の中で最も
多くなっています。肺ガンには
いくつかの種類がありますが、
その中で発生頻度が最も高いの
が肺腺ガンです。多くの肺腺ガ
ンではTTF-1 という転写因子が
発現しており、TTF-1 は肺腺ガ
ンの組織学的診断にも用いられ
ています。その一方で、さまざ
まな研究から、TTF-1 の発現が
認められない約20%の肺腺ガン
は進行が早く予後が悪いことが
明らかになっています。そこで、
TTF-1 陰性肺ガンがどのように
悪性度を高めているのかを明ら
かにすることが、TTF-1 陰性肺
ガンに対する新たな治療法の開
発を進めるための喫緊の課題と
なっていました。

 研究では、まず41個の肺腺ガ
ン細胞株の網羅的な遺伝子発現
データと蛋白TTF-1 陰性肺腺ガ
ン細胞にTTF-1 を発現させた所、
SRGNの発現は抑制されたものの、
TTF-1陽性肺腺ガン細胞でTTF-1
の発現を抑制してもSRGNは発現
しなかったことから、TTF-1 と
は別の分子メカニズムがSRGNの
発現を制御していることが示唆
されました。

 さらに興味深いことに、TTF-
1 陰性肺腺ガンでは、NNMTとい
う蛋白質が過剰に発現している
ことを見出しました。NNMTは、
必須アミノ酸であるメチオニン
の代謝に関連する酵素でありま
すが、メチオニン代謝経路から
は遺伝子発現を制御する重要な
分子メカニズムであるDNA メチ
ル化に必須な代謝産物が供給さ
れることが分かっています。そ
こで研究グループは、安定同位
体標識トレーサー法などによっ
て肺腺ガン細胞のメチオニン代
謝を解析しました。その結果、
TTF-1 陰性肺腺ガン細胞ではNN
MTの過剰発現によってメチオニ
ン代謝がリプログラミングされ、
SRGN遺伝子のDNA メチル化が起
こらなくなっており、SRGNの発
現が誘導されていることが明ら
かになりました。

 次に、研究グループはSRGNの
肺腺ガンにおける機能解析に取
り組みました。SRGNはほぼすべ
ての免疫細胞から分泌されてお
り、炎症を起こすサイトカイン
などの制御に関わっています。
ガン細胞から分泌されたSRGNは、
ガン細胞自身の遊走能、浸潤能
を亢進させ、炎症性サイトカイ
ンであるCXCL1,IL-6、IL-8の発
現や、免疫チェックポイント分
子PD-1と結合して免疫細胞の機
能を抑制するPD-L1 の発現を誘
導しました。また、SRGNは線維
芽細胞の活性化を促進したこと
に加えて、SRGNが制御するIL-6
とIL-8は血管内皮細胞の血管新
生を促進したことから、ガン細
胞から分泌されたSRGNは、より
免疫抑制的でより増殖や転移に
適した腫瘍免疫微小環境の構築
に重要な役割を果していること
が明らかになりました。

 さらに、米国MDアンダーソン
ガンセンターから提供された肺
腺ガン4症例、名古屋大学医学
部附属病院から提供された肺腺
ガン105 例においてSRGNの発現
を検討した所、SRGNが発現して
いる症例では、有意に全生存期
間が短く、また、PD-L1 の発現
が高いことを見出しました。PD
-L1 の発現が高い腫瘍は、免疫
チェックポイント阻害剤が有効
である可能性が高いことが知ら
れています。SRGNを発現させた
マウス肺腺ガン細胞を移植した
マウスモデルにおいて、免疫チ
ェックポイント阻害剤によって
腫瘍が著明に縮小したことから、
SRGNは予後予測バイオマーカー
としてだけでなく、免疫チェッ
クポイント阻害剤の効果を予測
するバイオマーカーとしても有
用であることが示唆されました。

 今回、肺腺ガンの予後不良な
サブタイプであるTTF-1 陰性肺
腺ガンにおいて、SRGNによる腫
瘍免疫微小環境の構築がその高
悪性化に重要な役割を果してい
ることが明らかになりました。
研究成果は、SRGNや、腫瘍免疫
微小環境、またNNMTなど関連す
る分子を標的とする新たな治療
法の開発につながることが期待
されます。「SRGNの発現を解析
することで予後予測、免疫チェ
ックポイント阻害剤の効果予測
など、肺腺ガン症例の層別化と
より精密な個別化医療の実現も
期待できる」と、研究グループ
は述べています。

肺腺ガンについて解説している

動画です。

 

 

 

 



 戸別の個別化医療を考える。 
















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2】 北海道でマダニ咬傷でかかるウイルス感染症を新発見















 北海道でマダニにかまれたこ
とでかかるウイルス感染症が新
たに見つかりました。2014~20
20年に少なくとも7人が感染し
たとする調査結果を、北海道大
などのチームがまとめました。
チームは「エゾウイルス」と命
名し、感染に注意を呼びかけて
います。

 チームによると、2019年5月、
山でマダニにかまれた札幌市に
住む男性(41)が39度以上の熱
が出て、一時入院しました。20
20年7月には同市内の男性(59)
がハイキング中にマダニのよう
なものにかまれ、発熱しました。
2人は血液中の白血球や血小板
が減少したほか、かまれた部分
の周辺に強い痛みが続いたり、
食欲不振になったりしました。
詳しく調べると、新たなウイル
スに感染していることが分かり
ました。

 北海道で2014年以降にダニを
介して感染症になった可能性が
ある248人の血液を分析した
所、5人がこのウイルスに感染
していたことが判明しました。
論文が今月、英科学誌ネイチャ
ー・コミュニケーションズに掲
載されました。

 厚生労働省は本州でもマダニ
を介した感染症が広がっている
可能性があるため、マダニにか
まれないよう、注意喚起する方
針です。担当者は「山に行く時
などは、肌の露出の少ない服装
を心がけてほしい」としていま
す。

マダニ感染症について解説して

いる動画です。

 

 

 

 



 換気に注意喚起した。  笑
















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編集後記



 愛知県ガンセンターが9月16
日、肺腺ガンの予後不良なサブ
タイプであるTTF-1 陰性肺腺ガ
ンで、高悪性化をきたす分子生
物学的メカニズムを詳細に解明
したと発表したのは、素晴らし
い業績です。今回、肺腺ガンの
予後不良なサブタイプであるTT
F-1 陰性肺腺ガンにおいて、SR
GNによる腫瘍免疫微小環境の構
築がその高悪性化に重要な役割
を果していることが明らかにな
り、研究成果で、SRGNや、腫瘍
免疫微小環境、またNNMTなど関
連する分子を標的とする新たな
治療法の開発につながることに
期待したいと思います。
 北海道でマダニにかまれたこ
とでかかるウイルス感染症が新
たに見つかり、2014~2020年に
少なくとも7人が感染したとす
る調査結果を、北海道大などの
チームがまとめ、「エゾウイル
ス」と命名し、感染に注意を呼
びかけているのは、由々しきこ
とです。厚生労働省は本州でも
マダニを介した感染症が広がっ
ている可能性があるため、マダ
ニにかまれないよう、注意喚起
する方針は、間違っていないと
思いますが、エゾウイルスは、
症状からして、SFTSに近いので
はないかと推察されます。

 中尉が下士官に注意する。笑
















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