診療マル秘裏話  Vol.831 令和1年11月13日作成

作者 医療法人社団 永徳会 藤田 亨




★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★













目次
 
1)粘膜免疫の恒常性維持に関する新メカニズムを発見
2)微小肺がんのマイクロチップを用いた術前マーキング方法















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆









 医療界のトピックスを紹介するこのメールマガジンは
1週間に1回の割合で発行しています。もっと回数を増や
して欲しいという要望もあるのですが、私の能力のなさ
から1週間に1回が限度となっています。これからも当た
り前の医療をしながら、なおかつ貪欲に、新しい知識を
吸収し読者の皆様に提供してゆきたいと思っております。
不撓不屈の精神で取り組む所存ですのでどうかお許し下
さい。

 









 
1】粘膜免疫の恒常性維持に関する新メカニズムを発見












 金沢大学は10月17日、呼吸器
系におけるインフラマソームに
依存しない粘膜免疫の恒常性維
持に関する新しいメカニズムを
発見したと発表しました。この
研究は、同大がん進展制御研究
所/新学術創成研究機構の土屋
晃介助教らの研究グループによ
るものです。研究成果は、国際
学術誌「Mucosal Immunology」
オンライン版に掲載されていま
す。呼吸器系では、肺炎球菌や
インフルエンザなどの微生物感
染が疾患の原因となるため、そ
の粘膜免疫が正常に機能するこ
とが非常に重要です。これまで
自然免疫機構の一種である蛋白
質複合体「インフラマソーム」
が、caspase-1 と呼ばれる蛋白
分解酵素を活性化させることで
炎症を引き起こし、感染防御を
担っていることが知られていま
した。今回研究グループは、野
生型マウス(WT)、caspase-1
欠損マウス(Casp1/11-/-)、N
LRP3欠損マウス(Nlrp3-/-)、
ASC欠損マウス(Pycard-/-)に
肺炎球菌を経鼻感染させ、48時
間後に肺内の菌数をコロニー法
で測定しました。野生型マウス
との比較において、NLRP3 欠損
マウスおよびASC 欠損マウスで
は有意な菌数の上昇が認められ
ましたが、caspase-1 欠損マウ
スでは認められませんでした。
この結果から、肺炎球菌性肺炎
への感染抵抗性にNLRP3とASCが
必要である一方、caspase-1 は
必要ではないことが示唆されま
した。また、NLRP3とASCはイン
フラマソーム形成を経てcaspas
e-1 を活性化させることで炎症
を誘導すると知られてきました
が、先の実験で得られた結果は、
NLRP3とASCが未知のcaspase-1
非依存的なメカニズムを介して
宿主防御に関わり得ることを示
唆しているということです。

さらに、遺伝子発現プロファイ
ルの結果から、肺炎球菌感染の
際、気道におけるTFF2やインテ
レクチン-1のような粘膜防御因
子の発現が、ASCとNLRP3によっ
てcaspase-1 非依存的に維持さ
れることが分かりました。また、
詳細な解析から、ASCとNLRP3は
2型サイトカインによるSTAT6の
活性化を促進することにより、
粘膜防御因子の発現を正に制御
する転写因子SPDEF の発現を維
持することが明らかになりまし
た。すなわち、ASCとNLRP3によ
るcaspase-1 活性化以外の新し
い宿主防御メカニズムが同定さ
れました。

今回の研究成果により、肺炎球
菌に対する防御にcaspase-1 の
活性化は必ずしも必要ではなく、
インフラマソーム構成蛋白質で
あるASCとNLRP3が重要な役割を
果たしていることが明らかにさ
れました。また、遺伝子発現プ
ロファイルによる解析の結果、
その作用機序としてASCとNLRP3
がcaspase-1 とは無関係に粘膜
免疫の恒常性維持に働くことが
判明しました。

これにより、呼吸器の粘膜免疫
の恒常性維持のための新しいメ
カニズムが確認されたこととな
ります。今後、気道における感
染や炎症の制御につながること
が期待されます。

自然免疫は下等生物から高等生
物まで保存された生体防御機構
であり、多数のパターン認識受
容体が自然免疫応答の中心的役
割を担っています。NLRP3やAIM
2、NLRC4などのパターン認識受
容体は、特定の刺激因子(アゴ
ニスト)を認識すると構造変化
を起こしてASC やカスパーゼ-1
などの蛋白質と介合し、インフ
ラマソームと呼ばれる蛋白複合
体を形成します。インフラマソ
ームでは蛋白分解酵素の一種で
あるカスパーゼ-1が活性化され、
活性型カスパーゼ-1がインター
ロイキン-1などの炎症性サイト
カインの成熟化・分泌を誘導す
ることで炎症が起こるとされて
います。

粘膜免疫・アレルギー治療学に

ついて解説している動画です。

 

 

 

 



 構成蛋白質についての記述を
校正する。        笑















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆














2】 微小肺がんのマイクロチップを用いた術前マーキング方法













 京都大学は10月17日、微小肺
がんに対するマイクロチップを
用いた術前マーキング方法を開
発し、世界で初めて患者さんへ
の臨床使用を開始したと発表し
ました。この研究は、同大大学
院医学研究科呼吸器外科の伊達
洋至教授、佐藤寿彦准教授(研
究当時、現:福岡大学准教授)
、豊洋次郎助教、株式会社ホギ
メディカルらの研究グループに
よるものです。 同技術の臨床
使用は、2019年9月27日に同大
学医学部附属病院で始まりまし
た。現在、肺がんの手術として
主流である低侵襲な胸腔鏡手術
では、小さな孔から内視鏡を用
いて手術するため、触知が困難
な微小かつ非浸潤性腫瘍の部位
を正確に同定することは困難と
されてきました。 同大では、
術前に気管支鏡ガイド下に肺の
表面を染色し術中の腫瘍の位置
を同定する方法を行ってきまし
たが、胸腔鏡手術では肺を虚脱・
変形させるほか、牽引などの手
術操作によっても臓器変形をき
たしやすく、胸膜から距離のあ
る深部病変では、腫瘍の正確な
位置をとらえにくいことが分か
ってきました。そのため、スマ
ートフォンやプリペイドカード
に使用され、近距離無線通信の
用途で普及しているradiofrequ
ency identification(RFID)
技術を応用し、肺表面から深い
場所に位置する病変に対しても
正確な位置同定を可能とする新
しい方法を開発しました。開発
された新たな手術方法の手順は
次の通りです。1)手術前に,RF
IDマイクロチップを、気管支鏡
用デリバリーシステムを用いて
経気管支的に病変の近くに留置
します。2) 全身麻酔下にアン
テナを患者さんの胸腔内に挿入
し、肺内に留置されたRFIDマイ
クロチップへ近づけると、検知
システムが病変の位置を表示し
ます。3) 外科医はアンテナの
位置と表示を参考に微小肺がん
を切除します。

開発されたマイクロチップは、
色素を肺表面から確認する従来
法とは異なり、肺内で狙った部
位に固定することができるので、
腫瘍が肺表面から離れた部位に
存在していても、深さを含めた
正確な病変位置がわかるという
ことです。早期肺がん患者さん
において不要なCT検査による経
過観察・放射線曝露を削減し、
より低侵襲かつ患者さんの肺機
能を温存する小さな切除、すな
わち正確な楔状切除術の実現が
可能となります。比較的安価な
装置で人体に無害な弱電機器で
あり、患者さんや外科医が被曝
することもなく手術を安全に行
うことができます。

今後は、同大、福岡大学をはじ
めとした多施設共同での臨床研
究を行い、このRFIDマイクロチ
ップを利用した肺がん手術のよ
り良い適応を見定めて普及を目
指す予定です。また、このマー
キング方法は呼吸器外科領域だ
けでなく、乳腺外科、消化管外
科などの他領域においても有効
である可能性が示されています。
海外でも注目されている技術で
あり、研究グループは、日本発
の医療機器として世界への普及
も目標としています。

肺がんの手術療法について解説

している動画です。

 

 

 



 比較的安価な行火を購入する。

















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆















編集後記



 金沢大学は10月17日、呼吸器
系におけるインフラマソームに
依存しない粘膜免疫の恒常性維
持に関する新しいメカニズムを
発見したと発表したのは素晴ら
しい業績です。インフラソーム
という用語も初耳でしたので、
本文の下に注釈を付けさせて頂
きました。粘膜免疫の恒常性の
維持には、caspase-1 の活性化
は必ずしも必要ではなく、イン
フラマソーム構成蛋白質である
ASCとNLRP3が重要な役割を果た
していることが明らかにされた
ということですから、通説が、
完全に覆された例と言えるでし
ょう。そこでノックアウトマウ
ス(特定の遺伝子を不活化した
マウス:その遺伝子の役割を調
べるのに用いる手法)を用いて
いるのはエレガントな方法だと
思いました。 この成果により、
呼吸器の粘膜免疫の恒常性維持
のための新しいメカニズムが確
認されたこととなり今後、気道
における感染や炎症の制御につ
ながることを大いに期待したい
と思います。
 京都大学が10月17日、微小肺
がんに対するマイクロチップを
用いた術前マーキング方法を開
発し、世界で初めて患者さんへ
の臨床使用を開始したと発表し
たのは偉大な業績です。従来の
術前マーキング法では、気管支
鏡ガイド下に肺の表面を染色し
術中の腫瘍の位置を同定する方
法を行ってきたということです
が、胸腔鏡手術では肺を虚脱・
変形させるほか、牽引などの手
術操作によっても臓器変形をき
たしやすく、胸膜から距離のあ
る深部病変では、腫瘍の正確な
位置をとらえにくいことが分か
ってきたので、今回のスマート
フォンやプリペイドカードに使
用され、近距離無線通信の用途
で普及しているradiofrequency
identification(RFID)技術を
応用し、肺表面から深い場所に
位置する病変に対しても正確な
位置同定を可能とする新しい方
法を開発したということで凄い
マーキングの方法であることが
実感できました。また、このマ
ーキング方法は呼吸器外科領域
だけでなく、乳腺外科、消化管
外科等の他領域においても有効
である可能性が示されているの
で今後の展開が楽しみですね。

 天海和尚が考えた首都防法の
展開を解析する。     笑















************************

このメールマガジンは以下の配信システムを利用して
発行しています。
  解除の手続きは下記ページよりお願い致します。
「まぐまぐ」https://www.mag2.com/m/0000121810.html
(イジニイワト)

発行者名  医療法人永徳会 皿沼クリニック院長 
藤田 亨
職業    医師の箸くれ(はしくれ)
運営サイト https://www.eitokukaisalanuma.or.jp/
ご意見・ご感想・励ましのお便りお待ちしております。
sara2162@atlas.plala.or.jp
このマガジンの掲載記事を無断で転載・使用すること
を禁じます。