診療マル秘裏話  Vol.836 令和1年12月18日作成

作者 医療法人社団 永徳会 藤田 亨




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目次
 
1)AMPA型グルタミン酸受容体作動時の分子機構を解明              
2)2型ナルコレプシーモデルマウスの作製に世界で初めて成功














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 医療界のトピックスを紹介するこのメールマガジンは
1週間に1回の割合で発行しています。もっと回数を増や
して欲しいという要望もあるのですが、私の能力のなさ
から1週間に1回が限度となっています。これからも当た
り前の医療をしながら、なおかつ貪欲に、新しい知識を
吸収し読者の皆様に提供してゆきたいと思っております。
不撓不屈の精神で取り組む所存ですのでどうかお許し下
さい。

 









 
1】AMPA型グルタミン酸受容体作動時の分子機構を解明











 岐阜大学は11月20日、脳の記
憶と学習に重要な働きをする蛋
白質分子であるAMPA型グルタミ
ン酸受容体が働くときに、どの
ように分子が組み立てられて働
くのかを解明したと発表しまし
た。この研究は、京都大学大学
院医学研究科 岡昌 吾教授、森
瀬譲二同助教、岐阜大学研究推
進・社会連携機構 生命の鎖統
合研究センター(G-CHAIN )鈴
木健一教授、沖縄科学技術大学
院大学 楠見明弘教授(後者2人
は、京都大学物質・細胞統合シ
ステム拠点であるiCeMS 客員教
授兼任)らの研究グループによ
るものです。研究成果は「Natu
re Communications 」に掲載さ
れています。ヒトの神経細胞同
士の結び目にあるシナプスは、
一旦形成された後も環境因子や
学習などの神経活動によって変
化することが知られており、シ
ナプス可塑性と呼ばれる柔軟性
を持っています。シナプス可塑
性の分子機構を明らかにするこ
とは、学習記憶の分子基盤の理
解、また、シナプスに病変があ
るさまざまな神経疾患の病態解
明にも、とても重要な研究課題
とされています。

AMPA型グルタミン酸受容体は4
つのサブユニット(GluA1-4 )
から成り、四量体で機能するイ
オンチャネル型受容体で脳内の
興奮性シナプスの可塑性に特に
重要な分子です。神経活動に応
じてAMPA型グルタミン酸受容体
は、シナプス後部での数やサブ
ユニットの組み合わせが変化し、
これによりシナプスでの伝達効
率が変化します。AMPA受容体は
シナプス後部で働きますが、そ
の主要な供給源はシナプス領域
外の樹状突起膜と考えられてい
ます。そのため、AMPA受容体は
神経活動に対応し、樹状突起膜
からシナプス後部への素早い移
動が必要となります。これまで、
AMPA受容体は小胞体内で四量体
が構築された後、細胞膜へ運ば
れても依然安定な四量体として
移動すると考えられてきました。
しかし、この定説には疑問点が
複数挙げられており、AMPA受容
体は四量体の形では神経細胞膜
上をほとんど動かないという報
告もあります。また、神経活動
に伴い、サブユニットの組成が
異なる受容体がシナプスに出現
しますが、四量体が安定してい
ると、不要な受容体をシナプス
から追い出し、全く新しい組み
合わせの四量体を合成してシナ
プスまで運ぶ必要があります。
これには多大な時間とエネルギ
ーや原材料などのリソースが必
要で、組成の異なる受容体に取
り替えるのは非常に困難と予想
されます。

研究グループは過去に、ゴルジ
体での糖鎖修飾がAMPA受容体の
四量体構成を大きく変えること
を見出しており、この結果は、
以前からの定説が間違っている
可能性を示唆していました。研
究グループは今回、本当に細胞
膜上のAMPA受容体が四量体とし
て存在するのか、同研究グルー
プが開発した最先端の1蛍光分
子イメージング法を改善して応
用し、AMPA受容体サブユニット
の1分子観察を行いました。

まず、AMPA受容体を持たないHE
K293細胞膜上で、蛍光標識AMPA
受容体を観察しました。この条
件では、すべてのAMPA受容体分
子を見ることが可能です。する
と、四量体以外にも、単量体が
たくさん発見されました。加え
て、その四量体も安定的ではな
く、単量体が集まっては一過的
に四量体を形成し、0.1~0.2秒
後には再び単量体・二量体・三
量体へ分かれていく様子が極め
て明瞭に観察されました。四量
体の寿命は0.1~0.2秒ですが、
その間にイオンチャネルとして
働くことも判明しました。同様
に神経細胞でも蛍光標識AMPA受
容体を観察しました。その結果、
樹状突起膜上では、多くが単量
体(または一部二量体)として
高速で動いてシナプス内に入り
込むこと、また、シナプスから
出ていくときも単量体として素
早く出ていくことが分かりまし
た。

シナプス内では、多数のAMPA受
容体のサブユニットが濃縮され
ています。そのため、単量体は
すぐに四量体となりますが、四
量体の寿命は0.1~0.2秒なので、
すぐに分解します。四量体が分
解する速度は決まっているもの
の、サブユニット濃度が高いと
単量体同士がぶつかる機会が増
え、単量体ができるとすぐに四
量体となるため、各サブユニッ
ト分子は、シナプス内では、四
量体として過ごす時間が増えま
す。ただ、あくまでも、1個の
四量体の寿命は変わらない可能
性が高く、この四量体が、チャ
ネルとして機能していると考え
られました。

今回の研究で、研究グループは
これまでの定説を覆し、受容体
の4つのパーツが0.1秒ほどでバ
ラバラになり、それらがまたす
ぐに違うパーツと集まって4個
で受容体を作って0.1 秒間働き、
またすぐにバラバラになるとい
うことを繰り返す、という仕組
みで働いていることを明らかに
しました。また、この仕組みを
使うことで、神経細胞は環境変
化や刺激に応じて、直ちに適し
た受容体をシナプスで作ること
ができ、4つのパーツに分けて
運ぶことで、シナプスに受容体
を集めるのも素早くなることも
判明しました。

AMPA型グルタミン酸受容体は、
てんかん発作の原因分子として
も知られており、受容体のチャ
ネル活性を制御する拮抗剤も治
療薬として注目されています。
研究グループは「本成果により、
学習記憶の分子機構の理解や、
関連する疾患への新たな治療薬
の開発につながることが期待さ
れる」と述べています。

AMPA型受容体の定義を示して

いる動画です。

 

 

 

 



 分子機構の講義を聞こう。笑













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2】 2型ナルコレプシーモデルマウスの作製に世界で初めて成功












 名古屋大学は11月19日、2型
ナルコレプシーのモデルマウス
の作製に世界で初めて成功した
と発表しました。 この研究は、
同大学環境医学研究所神経系分
野2の山中章弘教授らの研究グ
ループによるものです。 研究
成果は、「The Journal of Neu
roscience 」に掲載されていま
す。ナルコレプシーは睡眠障害
の一種で、日中に過度の眠気を
伴い、突然眠ってしまう病気で
す。日本人は600人に1人がナル
コレプシー患者さんだと言われ
ています。主な症状は、突然眠
ってしまう睡眠発作、突然体の
力が入らなくなる脱力発作(カ
タプレキシー)、いわゆる金縛
りである睡眠麻痺・入眠時幻覚
です。

ナルコレプシーには1型と2型が
あり、2型のナルコレプシー患
者さんでは、カタプレキシーの
症状は見られません。病気が起
こるメカニズムを理解するため
には、同様の症状を示すモデル
マウスの存在が重要です。1型
ナルコレプシーに関しては、オ
レキシン神経を脱落させたマウ
スがモデルマウスとなっていま
したが、これまでに2型ナルコ
レプシーのモデルマウスは存在
しませんでした。今回、研究グ
ループはオレキシン神経の活動
だけを制御するために、新しく
遺伝子を改変したマウスを作製
しました。近年、光遺伝学とい
う手法が、神経科学研究に導入
されています。黄色の光を当て
ると神経の活動を抑えることの
できるアーキロドプシン3と呼
ばれる光感受性蛋白質をオレキ
シン神経だけに発現するマウス
を作製しました。緑色の光を脳
内に照射すると、実際にオレキ
シン神経の活動を抑えることが
でき、その結果、マウスを眠ら
せることに成功したということ
です。

また、オレキシン神経にアーキ
ロドプシン3蛋白質が多く発現
するよう遺伝子を改変したマウ
スでは、光を照射しなくても、
体内時計のリズム異常や、睡眠
障害が現れることが分かりまし
た。同マウスでは、ナルコレプ
シー患者さんで見られるレム睡
眠の増加が観察されましたが、
1型ナルコレプシーに特徴的な
症状であるカタプレキシーの症
状は見られず、オレキシン神経
の脱落は見られませんでした。
これらの結果より、研究グルー
プは、世界で初めて、2型ナル
コレプシーモデルマウスの作製
に成功したとしています。

今回の研究成果により、2型ナ
ルコレプシーの症状が発現する
メカニズムが明らかになり、よ
り良い治療薬の開発に役立つ可
能性があるとし、今後は、作製
したモデルマウスを用いて、さ
まざまな薬物のスクリーニング
などを行い、ナルコレプシー2
型の症状を改善する薬剤の開発
に寄与したい、と研究グループ
は述べています。

ナルコレプシー1型と2型の違

いについて解説している動画で

す。

 

 

 



 キヨさんが坊ちゃんの仕事に
寄与したいと言った。   笑













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編集後記



 岐阜大学が11月20日、脳の記
憶と学習に重要な働きをする蛋
白質分子であるAMPA型グルタミ
ン酸受容体が働くときに、どの
ように分子が組み立てられて働
くのかを解明したと発表したの
は素晴らしい業績です。今回の
研究で、研究グループはこれま
での定説を覆し、受容体の4つ
のパーツが0.1 秒ほどでバラバ
ラになり、それらがまたすぐに
違うパーツと集まって4個で受
容体を作って、0.1 秒間働き、
またすぐにバラバラになるとい
うことを繰り返す、という仕組
みで働いていることを明らかに
したということですが、この様
な受容体の離合集散の仕組みを
使うことで、神経細胞は環境変
化や刺激に応じて、直ちに適し
た受容体をシナプスで作ること
ができ、4つのパーツに分けて
運ぶことで、シナプスに受容体
を集めるのも素早くなるという
ことでメリットが大きいと考え
られます。
 名古屋大学が11月19日、2型
ナルコレプシーのモデルマウス
の作製に世界で初めて成功した
と発表したのは偉大な業績です。
ナルコレプシーには1型と2型が
あり、2型のナルコレプシー患
者さんでは、カタプレキシーの
症状は見られません。病気が起
こるメカニズムを理解するため
には、同様の症状を示すモデル
マウスの存在が重要です。1型
ナルコレプシーに関しては、オ
レキシン神経を脱落させたマウ
スがモデルマウスとなっていま
したが、これまでに2型ナルコ
レプシーのモデルマウスは存在
しなかったという経緯がある様
です。 今回の研究成果により、
2型ナルコレプシーの症状が発
現するメカニズムが明らかにな
り、より良い治療薬の開発に役
立つ可能性があるとし、今後は、
作製したモデルマウスを用いて、
さまざまな薬物のスクリーニン
グなどを行い、ナルコレプシー
2型の症状を改善する薬剤の開
発に寄与して頂きたいものです。

 コンゴで今後のことを考える。















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