診療マル秘裏話  Vol.840 令和2年1月15日作成

作者 医療法人社団 永徳会 藤田 亨




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目次
 
1)ミクログリアが,血液脳関門機能制御することを発見
2)人のiPS細胞でブタの体内で人の膵臓を作る研究














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 医療界のトピックスを紹介するこのメールマガジンは
1週間に1回の割合で発行しています。もっと回数を増や
して欲しいという要望もあるのですが、私の能力のなさ
から1週間に1回が限度となっています。これからも当た
り前の医療をしながら、なおかつ貪欲に、新しい知識を
吸収し読者の皆様に提供してゆきたいと思っております。
不撓不屈の精神で取り組む所存ですのでどうかお許し下
さい。

 









 
1】 ミクログリアが,血液脳関門機能制御することを発見











 理化学研究所(理研)は12月
20日、脳内の免疫細胞であるミ
クログリアが血液脳関門の機能
を制御することを発見し、その
メカニズムを初めて明らかにし
たと発表しました。この研究は、
名古屋大学大学院医学系研究科
の和氣弘明教授(神戸大学先端
融合研究環特命教授)らのグル
ープが、同大大学院医学系研究
科の木山博資教授、自然科学研
究機構生理学研究所の鍋倉淳一
教授、自治医科大学の大野伸彦
教授、ニューサウスウェールズ
大学のAndrew J Moorhouse博士
らの協力を得て行ったものです。
研究成果は、英科学誌「Nature
Communications 」に掲載され
ています。脳内の血管は「血液
脳関門」と呼ばれる特殊な仕組
みを有しており、これが全身を
巡る循環系と中枢神経系の環境
を隔てるバリアとして機能して
います。血液脳関門が、感染症
や自己免疫疾患などの慢性的な
炎症によって機能低下すると、
神経の活動に影響を及ぼすこと
があります。近年、パーキンソ
ン病やアルツハイマー型認知症、
統合失調症などの精神・神経変
性疾患において、この血液脳関
門機能の異常が示されているた
め、血液脳関門の機能制御はこ
れらの疾患の予防法・治療法に
つながる可能性があるというこ
とです。

研究グループはこれらのことを
明らかにするため、生きたマウ
スを用いて、全身性の炎症に伴
って血液脳関門の機能が破綻す
る過程の観察を行いました。ま
ず、生きたマウスの脳を観察可
能な生体2光子顕微鏡を用いて、
全身性の炎症が誘導されたモデ
ルマウスのミクログリアを経日
的に同一部位を観察し、その動
きと血管の透過性を観察するこ
とで、ミクログリアの血液脳関
門への影響を調べました。

最初に炎症が持続している自己
免疫疾患のモデルマウスの脳を
観察したところ、血管に密着し
たミクログリアが多く存在する
ため、炎症により、ミクログリ
アが血管に集積すること、それ
に伴って、血液脳関門の透過性
が変化することが分かりました。
また、ミクログリアを除去した
マウスにおいては、早期には血
液脳関門の透過性が増加し、そ
の後においては透過性が抑制さ
れていることが判明しました。

これらの詳細な分子メカニズム
を明らかにするために網羅的に
遺伝子を解析し、早期において
は細胞の接着に重要な分子であ
るクローディン5(CLDN5)が
ミクログリアに発現し、後期相
においては貪食に関わる分子で
あるCD68が、ミクログリアに発
現することが分かりました。さ
らに、最新の電子顕微鏡を用い
てミクログリアと血管の微細構
造を観察すると、細胞の接着に
重要な分子であるCLDN5を発現
したミクログリアが、血管内皮
細胞に密着していることが分か
りました。これにより、ミクロ
グリアが自ら、破れたホースの
水漏れを抑えるシールのように
働いていることが明らかになり
ました。また、ミクログリアは
血管内皮細胞から放出されるケ
モカインであるCCL5に応答して
血管に誘引し、CLDN5を発現し
ていることも明らかとなりまし
た。CCL5を阻害することにより、
ミクログリアの血管への集積が
起こらず、結果として血液の漏
出が早まる現象も観察されまし
た。

さらに、ミクログリアは貪食に
関わる分子であるCD68を発現し、
血液脳関門を構成するアストロ
サイトという細胞の突起を一部
貪食していることを発見しまし
た。アストロサイトの突起は血
液脳関門の維持に重要であるこ
とが知られており、この構造の
破綻をきっかけに漏出が引き起
こされると考えられるというこ
とです。

最後に、ミクログリアの活性化
を抑制する抗生物質として知ら
れる「ミノサイクリン」をマウ
スに投与したところ、ミクログ
リアの血管への集積と初期の血
液脳関門の保護に影響を及ぼす
ことなく、慢性期の漏出悪化を
抑制できることが明らかになり
ました。これらの結果から、脳
内の免疫細胞であるミクログリ
アが全身性の炎症に伴って血管
に集積し、炎症の段階によって、
血液脳関門に保護的にも障害性
にも作用することが明らかにな
りました。さらにそのメカニズ
ムとして、ミクログリアによる
血管内皮細胞との直接の接触や、
アストロサイトの突起の貪食が
起こっていることを初めて明ら
かにしました。

今回の研究成果により、全身性
の炎症が慢性化した際、ミクロ
グリアの過剰な活性化を制御す
ることが、血液脳関門の保護に
効果的であることが示されまし
た。さらに、ミクログリアは単
に漏出を悪化させるだけでなく、
炎症初期の漏出の抑制にも重要
な役割を担っており、保護的な
側面を持ち合わせていることが
明らかになりました。「本研究
の成果は、全身性の炎症が原因
となる中枢神経系の疾患におい
て、ミクログリアを標的とした
新しい予防法・治療法の開発に
貢献することが期待される」と、
研究グループは述べています。

脳の免疫機能をつかさどるミク

ログリアについて解説している

動画です。

 

 

 

 



 摂食行為に接触することで、
親近感が増した。     笑














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2】 人のiPS細胞でブタの体内で人の膵臓を作る研究














 人のiPS細胞(人工多能性
幹細胞)を使ってブタの体内で
人の膵臓を作る明治大等の研究
について、文部科学省の専門委
員会は12月23日、計画を了承し
ました。動物の体内で人の臓器
を作る計画の了承は、国内では
東京大などのネズミに続き2例
目でブタは、初めてとなります。
ブタは臓器の大きさが人に近く、
人に移植できる臓器を作る研究
がブタで進んでいます。

 計画によると、長嶋比呂志・
明治大専任教授(発生工学)ら
の研究チームは、膵臓が作られ
ないよう遺伝子を改変したブタ
の受精卵に、様々な細胞に変化
できる人のiPS細胞を注入し、
ブタの子宮に入れます。

 受精卵が成長すると、ブタの
胎児の膵臓ができる部分にiP
S細胞が入り、人の細胞を含む
膵臓ができると期待されていま
す。

 研究チームは年度内に最初の
実験を実施し、約1か月後、膵
臓となる組織に人の細胞がどれ
だけ含まれるかなどを調べます。
人への移植は行わないそうです。

このニュースのニュース動画で

す。

 

 

 

 



 胎児の免疫と対峙する産科医。

















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編集後記




 理化学研究所(理研)が12月
20日、脳内の免疫細胞であるミ
クログリアが血液脳関門の機能
を制御することを発見し、その
メカニズムを初めて明らかにし
たと発表したのは、偉大な業績
です。ミクログリアがミノマイ
シンでその働きが抑制され神経
障害性疼痛の治療などに使われ
ることは、過去のメルマガで明
かしてきました。しかし血液脳
関門の透過性に、これほど深く
関わっているなどとは夢にも思
いませんでした。研究グループ
によると「本研究の成果は、全
身性の炎症が原因となる中枢神
経系の疾患において、ミクログ
リアを標的とした新しい予防法・
治療法の開発に貢献することが
期待される」ということですの
で、いよいよミノマイシンを使
った適応外とされていた治療法
が世の中に出現するきっかけに
なると確信しています。
 人のiPS細胞(人工多能性
幹細胞)を使ってブタの体内で
人の膵臓を作る明治大等の研究
について、文部科学省の専門委
員会が12月23日、計画を了承し
たのは、勇気ある決断だったと
考えています。現在、臓器移植
のドナーが極端に不足しており、
人のiPS細胞(人工多能性幹
細胞)を使ってブタの体内で人
の臓器を作ることが自由自在に
できるようになれば、ドナーの
不足に悩まされることなく移植
することが可能になるという、
目算があっての計画の了承だっ
たと私は、考えています。勿論、
ドナー臓器の代わりになるまで
には、まだまだ越えなければな
らない高いハードルがあります。
たとえば、できた膵臓等の臓器
にブタの細胞が混入していない
かとか、ブタ体内に生息するブ
タにとっては無害なウイルスが
膵臓等の臓器に悪い影響を与え
るのではないかなどの懸念です。

 生息する天然記念物を精測す
る。           笑


















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