診療マル秘裏話  Vol.891 令和3年1月6日作成

作者 医療法人社団 永徳会 藤田 亨




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目次
 
1)新免疫細胞療法のTCR-T細胞の効率的な作製法
2)夜間航空機騒音曝露が,CVD死を誘発する可能性













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 医療界のトピックスを紹介するこのメールマガジンは
1週間に1回の割合で発行しています。もっと回数を増や
して欲しいという要望もあるのですが、私の能力のなさ
から1週間に1回が限度となっています。これからも当た
り前の医療をしながら、なおかつ貪欲に、新しい知識を
吸収し読者の皆様に提供してゆきたいと思っております。
不撓不屈の精神で取り組む所存ですのでどうかお許し下
さい。

 









 
1】 新免疫細胞療法のTCR-T細胞の効率的な作製法












 イムノジェネテクス(東京都
千代田区、島岡猛士社長)は、
新たなガン免疫療法の武器とし
て期待される「TCR-T細胞」
の効率的な作製法を開発しまし
た。T細胞にT細胞受容体(T
CR)遺伝子を導入する際、ガ
ン抗原に反応しやすいTCR遺
伝子を選び出す独自の技術を確
立しました。既存手法よりガン
探索能力の強いTCR-T細胞
が作製できます。CAR-T療
法に比べて遅れているTCR-
T療法の実用化が近づく可能性
があります。

 人体の免疫機構を活発化して
ガンを治療する免疫療法の開発
が進んでいます。TCR-T療
法は、無数に存在するTCR遺
伝子から、ガン特異的なものを
見つけ、患者さんのT細胞に組
み入れてTCR-T細胞を樹立
しました。これを注射してガン
細胞を探索・攻撃する仕組みで
す。その前提としてTCR遺伝
子の多様性(レパトア)を解析
する必要があります。

 イムノジェネテクスのレパト
ア解析は、ガン組織の血液を「
CD4陽性T細胞レパトア」と
「CD8陽性T細胞レパトア」
に分離します。両レパトアと、
分離する前のレパトアをそれぞ
れ比べ、重複部分からガン特異
的TCRを探します。

 レパトア解析は通常、CD4
陽性かCD8陽性かを区別しま
せん。しかし、CD4陽性T細
胞は免疫の働きを弱める「制御
性T細胞」へ、逆にCD8陽性
T細胞はガンを攻撃する「キラ
ーT細胞」へ育ちます。このた
め、両レパトアを別々に解析し
た方が、ガン抗原への反応を正
しく判定しやすいとされていま
す。

 TCR-T細胞の作製時間も
短縮しました。ガン特異的なT
CR遺伝子は多数見つかるため、
一つに絞るのに時間を要します。
イムノジェネテクスは、米ベク
トン・ディッキンソンの「ラプ
ソディ」を用いたシングルセル
解析技術を開発しました。絞り
込みを容易にしました。

 TCR-T療法は、強化した
T細胞によりガンを攻撃する点
でCAR-T療法と共通します。
CAR-T療法には「キムリア」
「イエスカルタ」など上市され
た製品がある一方、TCR-T
療法は研究段階にとどまってい
ます。しかし、CAR-T療法
と違い、血液ガンだけでなく、
固形ガンにも展開しやすい利点
があります。

 イムノジェネテクスは、協和
キリンの血液がん薬「ポテリジ
オ」を共同開発した東京理科大
学の松島綱治教授の知見を基に
発足しました。レパトア解析に
ついては、TCR-T細胞の作
製だけでなく、免疫チェックポ
イント阻害剤の効果予想に使う
ことも検討しています。

 効く患者さんが2割程度と限
られること、まれに有害事象が
発生することが課題ですが、T
CRを手がかりに予測できる可
能性があるということです。

TLRとTCRについて解説してい

る動画です。

 

 

 

 



 効果予想をするのは、止そう。




T細胞受容体(TCR)遺伝子治療
とは、ガンのテーラーメイド医
療として注目を集めている新し
い養子免疫療法の一つで、以下
のような治療法です。まず、ガ
ン患者さんのリンパ球に、ガン
細胞に発現する腫瘍抗原を認識
できるTCR 遺伝子を導入します。
この際に、高い効率で遺伝子導
入することが重要となります。
遺伝子導入したリンパ球は大量
に培養された後、そのガン患者
さんに戻されます。このリンパ
球は腫瘍抗原を認識するTCR が
リンパ球上に発現していますの
で、そのTCR が腫瘍抗原を提示
するガン細胞を認識して特異的
に攻撃し、最終的にガン細胞を
消滅させることが可能となりま
す。

CAR-T細胞療法は、通常の免疫
機能だけでは完全に死滅させる
ことが難しい難治性のガンに対
する治療法として開発されまし
た。患者さん自身のT細胞を取
り出し、遺伝子医療の技術を用
いてCAR(キメラ抗原受容体)
と呼ばれる特殊な蛋白質を作り
出すことができるよう、T細胞
を改変します。CAR は、がん細
胞などの表面に発現する特定の
抗原を認識し、攻撃するように
設計されており、CAR を作り出
すことができるようになったT
細胞をCAR-T細胞と呼びます。
このCAR-T細胞を患者さんに投
与することにより、難治性のガ
ンを治療するのがCAR-T療法で
す。
















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2】 夜間航空機騒音曝露が,CVD死を誘発する可能性













 交通騒音への長期的な曝露は
心血管疾患(CVD) による死亡
のリスクを高めることが報告さ
れていますが、交通騒音による
急性的な影響について検討した
研究は少ないと言われています。
こうした中、スイス・Swiss Tr
opical and Public Health Ins
tituteのApolline Saucy氏らは、
夜間の航空機騒音への曝露がCV
D 死の引き金になる可能性を示
した研究結果をEur Heart J(2
020年11月27日 オンライン版)
に発表しました。夜間にCVD が
原因で死亡した患者さんのデー
タを解析した所、死亡の2時間
以内に高レベルの航空機騒音に
曝露した患者さんでは低レベル
曝露の患者さんと比べてCVD 死
のリスクが44%高まることが示
されました。

 道路交通騒音や航空機騒音な
どの環境騒音への長期的な曝露
は、虚血性心疾患の発症リスク
を高めることが複数の研究およ
びメタ解析で示されています。
しかし、それらの多くは長期的
な騒音への曝露による影響につ
いて検討したものでした。

 そこでSaucy 氏らは今回、夜
間(23:00~7:00) における航
空機の騒音への曝露がCVD によ
る死亡の引き金となりうるかど
うかについて検討するため、ス
イス国民コホート(Swiss Nati
onal Cohort) のデータを用い
て症例クロスオーバー研究を実
施しました。

 対象は、2000~15年にCVD に
よって死亡した同国チューリッ
ヒ空港の近隣住民2万4,886例で
す。曝露した航空機騒音レベル
は、当該期間における同空港の
全航空機の運航リストなどを用
いて推定しました。
 
 対象のうち夜間の死亡例は7,
641 例、日中の死亡例は1万7,2
45例でした。曝露した等価騒音
レベル(LAeq)は17.6~45.2dB
でした。

 解析の結果、夜間の死亡例に
おいて、死亡の2時間以内に曝
露した騒音レベルと全てのCVD
による死亡の間に有意な関連が
認められました〔LAeq 20dB 未
満群に対する50dB超群のオッズ
比(OR)1.44、95%CI 1.03~2
.04

 特に強い関連が認められたの
は女性(OR 1.13、95%CI 1.04
~1.23、交互作用のP=0.02)、
道路や線路から発生する騒音レ
ベルが低い静かな地域の住民(
同1.08,1.02~1.15、P=0.01)、
1970年以前に建てられた建物の
住民(同1.09 、1.01~1.18、P
=0.36)でした。

 また、全てのCVD 死亡例2万4
,886例中782 例に航空機騒音へ
の曝露が寄与しており、集団寄
与危険率(PAF)は3%と推定さ
れました。

 以上から、Saucy 氏らは「夜
間の航空機による騒音は、急性
のCVD 死を惹起する可能性があ
ることが示された」と結論しま
した。また、今回の研究で推定
されたCVD 死に対する航空機騒
音への曝露のPAF(3%)は、怒
りや性行為などのPAF と同程度
であったと説明しています。

深夜0時半頃の戦闘機の騒音の

動画です。

 

 

 

 



 賞品として八俵の米俵を発表
した。          笑















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編集後記




 イムノジェネテクス(東京都
千代田区、島岡猛士社長)が、
新たなガン免疫療法の武器とし
て期待される「TCR-T細胞」
の効率的な作製法を開発したの
は、喜ばしいことです。T細胞
にT細胞受容体(TCR)遺伝
子を導入する際、ガン抗原に反
応しやすいTCR遺伝子を選び
出す独自の技術を確立したと言
うことですので、既存手法より
ガン探索能力の強いTCR-T
細胞が作製でき、CAR-T療
法に比べて遅れているTCR-
T療法の実用化が近づく可能性
があるということは、凄いこと
だと思います。CAR-T療法
と違い、血液ガンだけでなく、
固形ガンにも展開しやすい利点
があるので、早く臨床試験に持
ち込み、臨床で使えるようにし
て頂きたいものです。
 交通騒音への長期的な曝露は
心血管疾患(CVD) による死亡
のリスクを高めることが報告さ
れていますが、交通騒音による
急性的な影響について検討した
研究は少ないと言われており、
そんな中、スイス・Swiss Trop
ical and Public Health Insti
tuteのApolline Saucy氏らが、
夜間の航空機騒音への曝露がCV
D 死の引き金になる可能性を示
した研究結果をEur Heart J(2
020年11月27日 オンライン版)
に発表したのは素晴らしい業績
です。今回の研究で推定された
CVD 死に対する航空機騒音への
曝露のPAF(3%)は、怒りや性
行為などのPAF と同程度であっ
たと説明しているということで
日常生活習慣で起こる程度であ
るなら、それ程、大きな影響と
は、考えにくいのですが、騒音
には、曝露しないに越したこと
はないと言えるでしょう。

 放射線曝露の実態を、暴露本
で表現した。       笑















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