診療マル秘裏話  Vol.907 令和3年4月28日作成

作者 医療法人社団 永徳会 藤田 亨




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目次
 
1)耐性非小細胞肺ガンの新規シード化合物を開発
2)Tsukushi遺伝子が水頭症発症に関与する事解明

 












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 医療界のトピックスを紹介するこのメールマガジンは
1週間に1回の割合で発行しています。もっと回数を増や
して欲しいという要望もあるのですが、私の能力のなさ
から1週間に1回が限度となっています。これからも当た
り前の医療をしながら、なおかつ貪欲に、新しい知識を
吸収し読者の皆様に提供してゆきたいと思っております。
不撓不屈の精神で取り組む所存ですのでどうかお許し下
さい。

 








 
1】 耐性非小細胞肺ガンの新規シード化合物を開発










 岩手医科大学は4月5日、同大
学薬学部情報薬科学分野教授の
西谷直之氏らの研究グループが
上皮成長因子受容体(EGFR)チ
ロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-T
KI)耐性非小細胞肺ガン(NSCL
C) の新規シード化合物ラメラ
リン14を開発、研究成果がCanc
er Sci(2021年2月5日オンライ
ン版)に掲載されたと発表しま
した。

 EGFR変異陽性NSCLC の薬物療
法ではEGFR-TKI耐性という課題
があります。耐性克服を目的に
第三世代EGFR-TKIオシメルチニ
ブが開発されましたが、オシメ
ルチニブに耐性を示す新たな変
異であるEGFR C797Sが報告され
ています。

 ラメラリンは海洋生物ベッコ
ウタマガイの一種から単離され
た天然物化合物で、ラメラリン
14はラメラリンの誘導体です。
複数のEGFR変異〔エクソン19欠
失変異(del19)/T790M/C797
S〕を有する,ヒト肺ガン細胞で
抗腫瘍効果を示しており、第三
世代EGFR-TKI耐性の克服が期待
されます。

上皮成長因子受容体(Epiderm
al Growth Factor Receptor; E
GFR)は,細胞の増殖や成長を制
御する上皮成長因子 (EGF) を
認識し、シグナル伝達を行う受
容体です。チロシンキナーゼ型
受容体で、細胞膜を貫通して存
在する分子量170 kDa (キロダ
ルトン)の糖蛋白質です。HER1、
ErbB1とも呼ばれます。

 EGFRの発現は上皮系、間葉系、
神経系起源の多様な細胞でみら
れます。細胞膜上にあるこの受
容体に上皮成長因子 (EGF) が
結合すると、受容体は活性化し、
細胞を分化、増殖させます。正
常組織において細胞の分化、発
達、増殖、維持の調節に重要な
役割を演じていますが、このEG
FRに遺伝子増幅や遺伝子変異、
構造変化が起きると、発ガン、
およびガンの増殖、浸潤、転移
などに関与するようになります。

EGFR阻害薬について解説して

いる動画です。

 

 

 

 



 最近の細菌の大勢が耐性菌と
なった。         笑
















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2】 Tsukushi遺伝子が水頭症発症に関与する事解明 













 九州大学は4月1日、Tsukushi
遺伝子が、水頭症の発症に関与
していることを世界で初めて明
らかにしたと発表しました。こ
の研究は、同大基幹教育院の太
田訓正教授(研究当時:熊本大
学大学院生命科学研究部)の研
究グループによるものです。研
究成果は、「Science Translat
ional Medicine」に掲載されて
います。

 脳の中では脳脊髄液が循環し
て、脳を外部の衝撃から守った
り、脳圧をコントロールしたり
しています。脳脊髄液は脳室で
作られ、脳内を循環して吸収さ
れます。水頭症は、脳室が拡大
して、脳室内での脳脊髄液が停
滞し、頭蓋骨内の圧力が高まる
ことにより発症する難病指定の
特定疾患です。特に、特発性正
常圧水頭症は、歩行障害・精神
疾患・尿失禁などの症状を呈し、
高齢化社会を迎える日本におけ
る患者数増加が懸念されていま
す。しかし、その発症要因が不
明であることから、同疾患の新
規予防・治療薬の開発は喫緊の
社会的課題となっています。

 Tsukushi遺伝子がコードする
蛋白質は、分泌型蛋白質で、細
胞外領域において情報を制御す
るシグナル仲介分子として機能
します。熊本大学をはじめとす
る国内外の12大学、5研究所と
の共同研究により単離され、ニ
ワトリ初期胚における発現パタ
ーンが、土筆に似ていることか
らTsukushi遺伝子と命名されま
した。

 今回、研究グループは、Tsuk
ushi遺伝子改変マウスを用いて、
水頭症との関連を解析しました。
まず、Tsukushi遺伝子欠損マウ
スは、野生型マウスと比べ脳の
大きさがひと回り小さく、生後
直後から水頭症患者さんの症状
と類似した脳室拡大が観察され
ました。また、生後直後のTsuk
ushi遺伝子欠損マウスの脳室に
Tsukushi蛋白質を投与した所、
脳室の拡大が抑制されました。
さらに、Tsukushi遺伝子欠損マ
ウスの行動解析を行った所、歩
行困難を伴い、不安様行動を示
しました。

 そこで原因不明の水頭症患者
さんのTsukushi遺伝子配列を調
べた所、3か所のアミノ酸置換
変異が観察されました。この変
異型Tsukushi蛋白質は、受容体
であるFrizzled3 に結合出来な
いものでした。

 最後に、人工的に変異型Tsuk
ushi蛋白質を発現するトランス
ジェニックマウスを作製しまし
た。同マウスでは、脳室拡大が
観察されました。

 今回、研究グループは、Tsuk
ushi遺伝子が、水頭症の発症に
関与していることを世界で初め
て明らかにし、水頭症発症のメ
カニズムの解明につながる重要
な研究結果を得ました。「今後、
Tsukushiを用いた水頭症診断と
新たな治療法の開発につながる
ことが期待される」と、研究グ
ループは述べています。

水頭症について解説している

動画です。

 

 

 

 



 筑紫平野で、土筆を見つけた。















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編集後記



 岩手医科大学は4月5日、同大
学薬学部情報薬科学分野教授の
西谷直之氏らの研究グループが
上皮成長因子受容体(EGFR)チ
ロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-T
KI)耐性非小細胞肺ガン(NSCL
C) の新規シード化合物ラメラ
リン14を開発、研究成果がCanc
er Sci(2021年2月5日オンライ
ン版)に掲載されたと発表した
のは素晴らしい業績です。耐性
非小細胞肺ガンに対しては、耐
性克服を目的に第三世代EGFR-T
KIオシメルチニブが開発されま
したが、オシメルチニブに耐性
を示す新たな変異であるEGFR C
797Sが報告されているというこ
とですので、いたちごっこの感
が否めませんが、複数のEGFR変
異〔エクソン19欠失変異(del1
9)/T790M/C797S〕を有する,
ヒト肺ガン細胞で抗腫瘍効果を
示していることで、将来有望な
新薬となることが期待されます。
 九州大学が4月1日、Tsukushi
遺伝子が、水頭症の発症に関与
していることを世界で初めて明
らかにしたと発表したのは、素
晴らしい業績です。水頭症の原
因については、難病指定の特定
疾患であることから、不明であ
ることは、周知の事実です。し
かし、特定の遺伝子がその発症
に関与しているとは、驚きを隠
せません。正常圧水頭症による
認知症状は、発症早期のシャン
ト手術で改善することが分かっ
ています。尿失禁が、特徴的な
症状で、私の伯母もトイレが近
いことで、発症していると予測
していました。シャント手術を
予定前日になってキャンセルし
たため、そのあと地元で手術を
受けたそうですが、認知症状は、
改善しませんでした。このよう
な悲劇が起こることのないよう
根本的な治療法が見つかること
を期待したいと思います。

 羞恥心の克服は、周知されま
した。          笑















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